ニボルマブ+プラチナ+α併用化学療法

 2014年の米国臨床腫瘍学会や欧州臨床腫瘍学会で報告された、進行非小細胞肺癌初回治療におけるニボルマブの第I相試験の結果が論文化された。

 既に臨床導入されている二次治療でのニボルマブ単剤療法とは異なり、3週間に1回の投与を継続する、という治療スケジュールになっている。

 第I相試験なので対象患者数は限られているものの、今回取り上げられた治療の中ではニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン併用群の生存期間延長効果が突出していた。扁平上皮癌や非扁平上皮癌に特化した治療レジメンとの組み合わせよりも古典的な非小細胞肺癌全体をカバーするパクリタキセル+カルボプラチンが、同じような位置づけのニボルマブと相乗効果を発揮していそうなのは興味深い。一方で、患者背景を見ると、ニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン併用群には腺癌(86%)、EGFR遺伝子変異陰性(86%)、KRAS遺伝子変異陽性(43%)、喫煙歴あり(79%)と、ニボルマブが効きそうな背景を有する患者が多く含まれている。こうしたことも今回の結果に反映されているかも知れない。Spider plotを見ても、明らかにdurable responseと思われる患者が、上記の併用群では多数含まれているように見えた。

Nivolumab in Combination With Platinum-Based Doublet Chemotherapy for First-Line Treatment of Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.

Rizvi et al.

J Clin Oncol. 2016 Sep 1;34(25):2969-79.

背景:

 ニボルマブは既治療進行非小細胞肺癌に対する生存期間延長効果が既に示されている。マルチコホート第I相試験であるCheck Mate 012試験は、進行非小細胞癌に対してニボルマブを単剤で、あるいは既存の標準治療と併用で治療したときの安全性と有効性を検証する試験である。今回、ニボルマブとプラチナ併用化学療法(PT-DC)の同時併用に関して報告する。

対象と方法:

 対象患者は56人で、ニボルマブとプラチナ併用化学療法を同時併用で、3週間ごとに4コース行い、その後にニボルマブを病勢進行もしくは耐容不能な有害事象が起こるまで継続する治療スケジュールにした。治療レジメンは、扁平上皮癌に対してニボルマブ10mg/kg+シスプラチン+ジェムシタビン療法、非扁平上皮癌に対してニボルマブ10mg/kg+シスプラチン+ペメトレキセド療法、あるいは全ての非小細胞肺癌を対して、ニボルマブを5ないしは10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン療法のいずれかとした。主要評価項目は安全性と忍容性とした。副次評価項目は、奏効割合、24週無増悪生存割合とした。探索的評価項目として、全生存期間、PD-L1発現状態ごとの奏効割合とした。

結果:

 当初6週間の治療期間においては、用量制限毒性は認められなかった。45%(56人中26人)の患者では、Grade 3-4の治療関連有害事象を認めた。7%(4人)で肺臓炎を発症した。21%(12人)で治療関連有害事象によりプロトコール治療を中止した。ニボルマブ+シスプラチン+ジェムシタビン群、ニボルマブ+シスプラチン+ペメトレキセド群、ニボルマブ10mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群、ニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群の奏効割合はそれぞれ33%, 47%, 47%, 43%だった。同様に、24週間無増悪生存割合はそれぞれ51%, 71%, 38%, 51%だった。2年生存割合は25%, 33%, 27%, 62%だった。PD-L1発現状態によらず、一定の奏効が認められた。

結論:

 ニボルマブを上乗せしても、プラチナ併用化学療法のみの場合の安全性プロファイルとさして違いはなかったが、治療関連有害事象による治療中止はプラチナ併用療法のみの場合より多い印象だった。治療効果は有望で、とりわけニボルマブ5mg/kg+パクリタキセル+カルボプラチン群ではよい結果が得られた。