新しい治療が開発されて、古い標準治療にとってかわる。
裏を返せば、新しい標準治療が確立されれば、古い治療は埋もれていく。
だけど、実際にはそうならないこともある。
誰も表立って言わないけれど、治療選択する上で、臨床試験における治療成績の好悪とは関係なく存在する、不文律がある。
その治療が取り組みやすいものかどうかだ。
不謹慎と言われるかもしれないが、間違いなくそうだ。
多分、一般の担当医が考えるであろう発想を並べてみる。
プラチナ併用化学療法では、シスプラチンよりもカルボプラチンが好きだ。
カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブよりも、シスプラチン+ペメトレキセドの方が好きだ。
シスプラチン+ペメトレキセドよりも、カルボプラチン+ペメトレキセドの方が好きだ。
ドセタキセルよりもペメトレキセドの方が好きだ。
プラチナ併用化学療法よりも、条件が許せばペンブロリズマブの方が好きだ。
ドセタキセルよりも、ペンブロリズマブの方が好きだ。
ニボルマブよりも、ペンブロリズマブの方が好きだ。
化学療法よりも、分子標的薬の方が好きだ。
エルロチニブよりもゲフィチニブの方が好きだ。
他のEGFR阻害薬よりもオシメルチニブの方が好きだ。
クリゾチニブよりもアレクチニブの方が好きだ。
セリチニブよりもアレクチニブの方が好きだ。
シスプラチン+エトポシド+イリノテカンよりもアムルビシンの方が好きだ。
シスプラチン+エトポシド+イリノテカンよりもノギテカンの方が好きだ。
カルボプラチン+パクリタキセルよりも、カルボプラチン+ナブパクリタキセルの方が好きだ。
カルボプラチン+ナブパクリタキセルよりも、カルボプラチン+S1の方が好きだ。
ネダプラチン+ドセタキセルよりも、その他のプラチナ併用化学療法の方が好きだ。
ドセタキセルよりもS1の方が好きだ。
ジーラスタを使わないよりは使った方が好きだし、できれば初回治療から使いたい。
基準はただひとつ。
その治療が取り組みやすいかどうかだ。
そして、きちんと調べたわけではないが、担当医が取り組みやすい治療は、患者のQOLを高めている可能性が高い。
担当医が取り組みやすいということは、患者を治療に拘束する時間や痛み・不快を伴う処置が少なく、有害事象が軽微と言うことでもあるだろう。
一つ前の記事で、プラチナ併用化学療法+抗VEGF抗体+PD-L1抗体のことを書いた。
実地臨床でこの治療が定着するためには、相当な生命予後延長効果が証明されないと普及しないような気がする。
いざやるとなると、煩雑を極めそうだからだ。
おまけに高そうだからだ。