Nivolumabの憂鬱

 2016年欧州臨床腫瘍学会の話題で、Pembrolizumabの一次治療の話題ばかり取り上げているが、CheckMate-026試験も別の意味で注目されている。

 既にNivolumabが二次治療以降で臨床導入されている我が国では、Nivolumabがそのまま一次治療へupfrontに使えるようになるのがシンプルな成り行きだった。

 だが、残念ながらそうはならなかった。

 患者選択を緩めに、治療の恩恵を受ける患者の間口を広げよう、ということでPD-L1によるスクリーニングを甘くしたところ、残念なことにnegative trialに終わってしまった。

 一部の患者に福音をもたらす治療を開発するのか、万人に効果を約束できるような治療開発をするのか。

 この点でPembrolizumabとNivolumabは、似たような薬でありながらも明暗を分けてしまった。

< Nivolumab一次治療はガッカリな結果 >

 CheckMate026試験は、進行期非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、ニボルマブの単剤療法と治験担当医師が選択した化学療法薬とを比較した第III相の無作為化オープンラベル試験。進行期の病状に対する全身治療を受けておらず、PD-L1発現陽性(1%以上)患者541例が登録され、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごとに投与か、治験担当医師が選択したプラチナ・ダブレット化学療法(扁平上皮がん患者ではゲムシタビン+シスプラチン、ゲムシタビン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチンのいずれか、非扁平上皮がん患者ではペメトレキセド+シスプラチン、ペメトレキセド+カルボプラチンのいずれかの後に任意でペメトレキセド維持療法)に無作為に割り付けられ、病勢進行や忍容できない毒性が認められるまで、あるいは6サイクルが完了するまで投与された。主要評価項目はPD-L1発現レベル5%以上の患者におけるPFSで、独立放射線評価委員会により評価された。

 Pembrolizumabの華々しい結果とは対照的に、そして、同じような治療薬なだけに逆に驚くべきことだが、Nivolumabはドライバー遺伝子変異を持たない非小細胞肺癌患者の一次治療として有効性を示せなかった。

 CheckMate026試験は、進行期非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、ニボルマブの単剤療法と治験担当医師が選択した化学療法薬とを比較した第III相の無作為化オープンラベル試験。進行期の病状に対する全身治療を受けておらず、PD-L1発現陽性(1%以上)患者541例が登録され、ニボルマブ3mg/kgを2週間ごとに投与か、治験担当医師が選択したプラチナ・ダブレット化学療法(扁平上皮がん患者ではゲムシタビン+シスプラチン、ゲムシタビン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチンのいずれか、非扁平上皮がん患者ではペメトレキセド+シスプラチン、ペメトレキセド+カルボプラチンのいずれかの後に任意でペメトレキセド維持療法)に無作為に割り付けられ、病勢進行や忍容できない毒性が認められるまで、あるいは6サイクルが完了するまで投与された。主要評価項目はPD-L1発現レベル5%以上の患者におけるPFSで、独立放射線評価委員会により評価された。

 PD-L1発現レベルが5%以上の患者におけるPFS中央値はニボルマブ群で4.2ヵ月、プラチナ・ダブレット群(以下、化学療法群)では5.9ヵ月であった(層別化HR:1.15、95%CI:0.91〜1.45、p=0.25])。全生存期間(OS)は、ニボルマブ群で14.4ヵ月、化学療法群では13.2ヵ月であった(HR:1.02、95%CI:0.80〜1.30)。化学療法群の60%が、PD後にニボルマブによる治療へ切り替えられた。ニボルマブの安全性プロファイルは、従来の報告と一貫していた。投与患者における全GradeおよびGrade3〜4の有害事象(AE)発現率は、ニボルマブ群でそれぞれ71%と18%、化学療法群では92%と51%であった。

 なぜPembrolizumabは成功し、Nivolumabは失敗したのか?

 さまざまな説明が試みられているが、患者選択の違いを挙げる識者が多い。

 KEYNOTE-024試験におけるpembrolizumab投与対象は腫瘍細胞の50%以上がPD-L1を発現していた患者で、CheckMate-026試験におけるNivolumab投与対象は腫瘍細胞の5%以上がPD-L1を発現していた患者だった。

 だったら、Nivolumabでも同じような対象患者の絞り込みを行っていればよかったのか?CheckMate-026試験におけるサブグループ解析では、対象患者数が少なく検出力不足とはいいつつも腫瘍細胞の50%以上がPD-L1を発現していた患者群で検討しているが、化学療法群に対する無増悪生存期間のハザード比は1.1、全生存期間のハザード比は0.9、奏功割合は34%程度だった(pembrolizumabでは44%)。

 また、CheckMate-026試験の発表者は他の考察もしている。すなわち、

・化学療法群の全生存期間成績が、既知の成績よりも優れていた

・Nivolumab群と化学療法群で患者背景が異なり、化学療法群に女性やアジア人が多く含まれていた

→女性の比率は、Nivolumab群34%、化学療法群45%

・化学療法群の中に、病勢進行後Nivolumabに治療を変更した患者が多数いた(化学療法群の60%が免疫療法を受けた)。

 それから、CheckMate-026試験では不可解なことに参加者の37%が試験登録前に既に放射線治療を受けていた。

 参加者は未治療であることが前提であるはずなのに、なぜこんなことになっているのかわからない。