Pembrolizumab+プラチナ併用化学療法

 Pembrolizumabの国内承認の手続きが棚上げになっている。

 まずはNivolumabの薬価の件を片付けてから手をつけようということだろうか。

 今朝の日本経済新聞の朝刊の社説で、

 「政府は、超高額の抗がん剤オプジーボの公定価格、緊急的な措置として来年2月から今の半額にすることを決めた」

と述べられていた。

 その同じページの広告欄に、Nivolumab亡国論を主張してきたK先生(作家としてはS先生というべきか?)の著書のことが載っていた。

 意図的に成された紙面構成なら、なかなか気が利いている。

 そんな中、Pembrolizumabの話題はまだ尽きない。

 PD-L1高発現ならプラチナ併用化学療法を凌駕する、ということは示されたが、今回のPembrolizumab+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法は、PD-L1発現状態に関わらず一定の効果を示しているようである。

 第III相試験が2本進行中で(KEYNOTE-189:プラチナ+ペメトレキセド±Pembrolizumab、KEYNOTE-407:扁平上皮癌に対するカルボプラチン+パクリタキセル(nabも含む)±Pembrolizumab)、これらがpositiveになると、分子標的薬の対象とならない非小細胞肺がんではほぼ全てPembrolizumabを使うことになり、プラチナ製剤と同様の位置づけに収まることになるかもしれない。

Carboplatin and pemetrexed with or without pembrolizumab for advanced, non-squamous non-small-cell lung cancer: a randomised, phase 2 cohort of the open-label KEYNOTE-021 study.

Langer CJ et al, Lancet Oncol. 2016 Nov;17(11):1497-1508.

背景:

 非小細胞肺がんの初回治療において、プラチナ併用化学療法に加えてさらに他の薬剤を追加することにより臨床効果に改善が得られるかどうかについては、これまでのところエビデンスが限られている。抗PD-1抗体であるPembrolizumabは進行非小細胞肺がん患者に対する単剤治療で有効性を示し、化学療法と毒性プロファイルが異なる。今回は進行非扁平非小細胞肺がんに対して、プラチナ併用化学療法にpembrolizumabを上乗せすることにより有効性が高まるかどうか検証した。

方法:

 今回の無作為化オープンラベル第II相マルチコホート臨床試験KEYNOTE-021)において、米国と台湾の計26施設から患者が集積された。化学療法歴がなく、sEGFRmやALKrを有さないIIIB / IV期の非扁平非小細胞肺がんの患者を、腫瘍のPD-L1発現状態(<1% vs ≧1%)で層別化し、無作為・均等に併用群(Pembrolizumab 200mg + カルボプラチン 5AUC + ペメトレキセド 500mg/?を3週ごと、4コース投与した後にPembrolizumab維持療法を24ヶ月と、ペメトレキセド維持療法を行う)と非併用群(カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を4コースの後ペメトレキセド維持療法を行う)に割り付け、計4群とした。主要評価項目は奏効割合とした。有意水準は片側検定でp<0.025とした。本試験は既に患者集積を終了したが、いまだ追跡期間中である(ClinicalTrials.gov, number NCT02039674)。

結果:

 2014年11月25日から2016年1月25日にかけて、123人の患者が登録された。60人は併用群に、63人は非併用群に割り付けられた。併用群の奏効割合は55%(60人中33人、95%信頼区間は42-68%)で、非併用群の奏効割合は29%(63人中18人、95%信頼区間は18-41%)だった。その差は26%(95%信頼区間は9-42%、p=0.0016)だった。Grade 3以上の治療関連有害事象の割合は両群で同等だった(併用群で39%(59人中23人)、非併用群で26%(62人中16人))。Grade 3以上の有害事象の内訳は併用群では貧血(12%)、好中球減少(5%)、急性腎障害(3%)、リンパ球減少(3%)、疲労(3%)、敗血症(3%)、血小板減少(3%)だった。非併用群では貧血(15%)、好中球減少(3%)、汎血球減少(3%)、血小板減少(3%)だった。併用群のうち1例は敗血症で死亡し、非併用群のうち2例はそれぞれ敗血症と汎血球減少で死亡した。

結論:

 Pembrolizumab+カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法は進行非扁平非小細胞肺がんの一次治療の選択肢として有望である。現在、国際無作為化第III相臨床試験でさらに検証中である。