小細胞がんとipilimumab

 今回取り上げる論文に対する論説には、

 「ここ20年というもの、小細胞肺がんに対する新規医薬品の申請はなかった」

ととてもさびしいコメントが寄せられている。

 このipilimumab併用療法の第III相臨床試験、CA184-156試験には日本からも参加者があった。

 参加のためのスクリーニングを受けた人が1,414人、実際にランダム化され治療に割り付けられたのは1,132人だった。

 これだけ大規模な臨床試験でありながら、それも免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいとされる喫煙関連がん=小細胞がんにターゲットを絞りながらも、意味のある結果が出なかったのは本当に残念である。

 

Phase III randomized trial of ipilimumab plus etoposide and platinum in Extensive stage small cell lung cancer.

Reck et al.

J Clin Oncol, 34(31), 3740-3748, 2016

背景:

 進展型小細胞肺がん患者は、一次治療でプラチナ製剤とエトポシドの併用化学療法を行っても、生命予後は悪い。今回、二重盲見無作為化比較試験のデザインで、プラチナ+エトポシド±Ipilimumabの第III相試験を行った。

目的:

 参加者は1:1の比率でプラチナ製剤+エトポシド+ipilimumabを3週間ごとに使用する群(Ipilimumab群)とプラチナ製剤+エトポシドプラセボを使用する群(プラセボ群)に割り付けられた。化学療法は1から4コース目で、Ipilimuabとプラセボは3コース目から6コース目まで使用した。その後は、12週ごとにIpilimumabかプラセボを使用した。主要評価項目は、少なくとも一度のプロトコール治療(Ipilimumabまたはプラセボ)を受けた患者の全生存期間とした。

方法:

 無作為割付された1,132人のうち、954人が少なくとも1コースのプロトコール治療を受けた。Ipilimumab群は478人、プラセボ群は476人だった。生存期間中央値はIpilimumab群で11.0ヶ月、プラセボ群で10.9ヶ月、ハザード比0.94、95%信頼区間0.81-1.09, p=0.3775と全く振るわなかった。無増悪生存期間中央値はIpilimumab群で4.6ヶ月、プラセボ群で4.4ヶ月、ハザード比は0.85、95%信頼区間は0.75−0.97だった。有害事象は、Ipilimumab群でしばしば見られた下痢、発疹、腸炎をのぞいては、両群ともにほぼ同様だった。治療に関連した有害事象による治療中断は、Ipilimumab群でより顕著だった(18% vs 2%)。Ipilimumab群では5人、プラセボ群では2人の治療関連死が発生した。

結論:

 標準化学療法にIpilimumabを併用しても、全生存期間が延長しないことが分かった。