テレビの影響

 いまさらだが、テレビというメディアの影響は大きい。

 インターネット社会になり、「詳しくはネットで」といううたい文句が当たり前になった。

 それでも、肺がんにかかる年齢層の大部分は、情報媒体としてはネットよりもテレビや書籍に頼ることが多いだろう。

 自宅にいながらにして、スイッチを入れれば自然と映像・音声情報が流れてくる手軽さは、テレビ独自のものだろう。

 NHKスペシャルでLC-SCRUMやONCOPRIME(http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e846830.html)が紹介され、私の勤める私立病院ですら数件の問い合わせがあった。

 多くの患者さんが集まる基幹病院では対応に苦労していることだろう。

 その数件の問い合わせについて、それぞれ少し触れる。

 

・肺腺癌、IV期、EGFR遺伝子変異陽性で、LC-SCRUMへの参加を担当医に希望したら、「あれは稀な遺伝子変異のための検査だから」と断られた

→LC-SCRUMでは、肺腺癌の場合は原則として「EGFR遺伝子変異を持たない患者」を対象としている。

 したがって、この患者は対象にならない。

 それでも網羅的遺伝子解析を希望するならば、京都大学北海道大学等で行われている自費診療、ONCOPRIMEへの参加を検討するべきだろう。

・進行期の乳癌、肺転移あり、LC-SCRUMに参加できないか

→LC-SCRUMは原発性肺がんの患者が対象であり、他の臓器から発したがんが肺に転移した場合は対象外である。

 これも網羅的遺伝子解析をするならば、ONCOPRIMEへ。

・進行期の大腸がん、LC-SCRUMに参加できないか

→大腸がんであればSCRUM-Japan内のGI-SCREENで対応できる可能性がある(http://epoc.ncc.go.jp/scrum/gi_screen/)。

 この方は四国からお問い合わせくださったので、四国がんセンターに問い合わせるようにアドバイスした。

・肺腺癌、IV期、症状を伴う脳転移あり、数次にわたる化学療法とニボルマブまで行ったが病勢進行に至った

→この方は、適切な生検検体さえ採取できれば、LC-SCRUMへの参加ができそう。

 しかし、症状を伴う脳転移があると、仮になにかの遺伝子変異が見つかり、それに対応した治験があっても、参加できない可能性がある。

 転移巣の外科的摘出、他の部位からの生検等を検討するために、まずは本人・家族と面談することにした。

・診断未確定、CT画像では肺がん・胸膜播種が疑われる、初回診断時からLC-SCRUMに参加できないか

→生検検査自体のリスクを考えると、初回診断時点から網羅的遺伝子解析を受けたいと思うのは人情だ。

 しかし、肺がんと診断され、組織型やEGFR遺伝子変異の有無までは判明しないとそもそも試験参加申請自体が出来ない。

 検体を凍結保存できる設備があればまだしもだが、当院には-80℃保存できるフリーザーなんて置いていない。

 生検組織の凍結保存を検査会社に一時委託できないか、週明けに問い合わせる予定にした。