Osimertinib>platinum+pemetrexed for T790M

 Osimertinibに関連して、ようやく真打のデータが出てきた。

 一般にはAURA3と呼ばれている臨床試験、世界肺癌会議2016で公表され、同時に論文化された。

 要約と、本文中の気になった部分を書き残す。

 クロスオーバーが容認された試験のため、多分全生存期間では有意差はつかない。

 しかし、この患者群におけるOsimertinibの有効性に疑問を呈する人はいないだろう。

 AURA3までは、まあ言ってみれば予定調和というか、規定路線というか、みんなが予想していた通りの結果である。

 多分そうなるだろうな、と考えられていた通りの結果が出た。

 あとは、FLAURA試験がどんな成績を収めるかに興味が向かう。

 FLAURA試験によってOsimertinibが勝る結果が出たら、他のEGFR阻害薬は一気に駆逐されるだろう。

Osimertinib or Platinum-Pemetrexed in EGFR T790M-Positive Lung Cancer

TS Mok et al, N Engl J Med 2016

背景:

 Osimertinibは非小細胞肺癌患者のEGFR-TKI感受性変異とT790M耐性変異を有する上皮成長因子受容体を選択的に阻害するEGFR阻害薬である。こうした患者に対する、Osimertinibと白金製剤+ペメトレキセド併用化学療法の効果比較についてははっきりしていない。

方法:

 今回の国際オープンラベル無作為化第III相臨床試験において、EGFR-TKIによる初回治療後病勢進行に至り、T790M耐性変異陽性の進行非小細胞肺癌患者419人を対象とした。2:1の割合でOsimertinibを内服する群(O群)と、カルボプラチンもしくはシスプラチンとペメトレキセドの併用療法を3週間ごとに最大6コース行い、維持療法も可とする群(C群)に割り付けた。主要評価項目は無増悪生存期間とした。

結果:

 無増悪生存期間中央値はO群で10.1ヶ月、C群で4.4ヶ月と、O群で有意に延長していた(ハザード比 0.30、95%信頼区間0.23-0.41、p<0.001)。奏効割合はO群で71%(95%信頼区間は65-76%)、C群で31%(95%信頼区間は24-40%)と、O群で有意に優れていた(オッズ比5.39、95%信頼区間は3.47-8.48、p<0.001)。中枢神経系に転移を有する患者144人において、無増悪生存期間中央値はO群で8.5ヶ月、C群で4.2ヶ月と有意にO群で延長していた(ハザード比0.32、95%信頼区間0.21-0.49)。Grade 3以上の有害事象の割合はO群で23%、C群で47%と、O群で低頻度だった。

結論:

 EGFR-TKI初回治療後に病勢進行に至ったT790M陽性進行非小細胞肺癌患者(中枢神経系への転移を有する患者を含む)において、プラチナ製剤+ペメトレキセド併用化学療法に対して、Osimertinibはより優れた臨床効果を示した。

・適格患者のスクリーニングは、2014年8月から2015年9月(のわずか13ヶ月間)に、126の参加施設で行われた

・適格患者の基準として、「腫瘍組織や腫瘍細胞でEGFR遺伝子変異検索を行った患者」とは書かれていない

→リキッドバイオプシーのみでT790M陽性と判定された患者も登録されているのかも

・参加者は全てcobas EGFR遺伝子変異検索キットver.2を使用してEGFR遺伝子変異検索を受けた

・参加者は全て、cobas EGFR遺伝子変異検索キットver.2を用いたリキッドバイオプシーを義務付けられた

・割付調整因子として、アジア人か非アジア人かという基準が設けられた

・2014年12月22日(適格患者のスクリーニング開始からわずか4ヵ月後)にプロトコール改訂が行われ、C群に割り付けられた患者の病勢進行が確認されたら、Osimertinibを使用してよいことになった。

→当初はC群はOsimertinibを使用できないことになっていたのだろうが、試験の進捗とともに効果の差がはっきりしてきて、Osimertinibの使用を禁じることは倫理的に問題があると判断されたのかもしれない

・事前に規定されたサブグループ解析としては、リキッドバイオプシーでT790M陽性が確認された患者群での解析、中枢神経系の転移を有する患者群での解析が規定された

・治療開始時のベースライン評価は、「プロトコール治療開始後28日以内」に行った

→あらら、「プロトコール治療開始前」ではないのね

・効果判定は6週間ごとに行った

・データカットオフは2016年4月15日に行った

・1036人をスクリーニングして、419人が参加した

→T790M陽性割合は約40%

・腫瘍組織とリキッドバイオプシーの両方でT790M陽性となった患者は419人中172人(41%)いた

・279人がO群に、140人がC群に割り付けられた

・データカットオフ時点で、O群のうち166人(59%)、C群のうち16人(12%)がプロトコール治療を継続していた

→O群の41%、C群の88%はそれぞれの治療が効かなくなった

・C群のうち60%(136人中82人)は病勢進行後Osimertinibを使用し、そのうち77%(82人中63人)はデータカットオフ時点でもOsimertinibを継続使用していた

・データカットオフ時点で、患者追跡期間中央値は8.3ヶ月で、病勢進行が確認された患者はO群で50%(279人中140人)、C群で79%(140人中110人)だった

・Exon 19 deletionの患者ではハザード比0.34(95%信頼区間0.24-0.46)

・Exon 21 point mutationの患者ではハザード比0.46(95%信頼区間0.30-0.71)

・アジア人ではハザード比0.32(95%信頼区間0.24-0.44)

・非アジア人ではハザード比0.48(95%信頼区間0.32-0.75)

・腫瘍組織とリキッドバイオプシー両方でT790M陽性だった患者の無増悪生存期間中央値はO群で8.2ヶ月、C群で4.2ヶ月、ハザード比は0.42、95%信頼区間は0.29-0.61だった

間質性肺炎はO群で10人(4%)で、9人はGrade 1-2に留まり、1人は死亡した

・人種、性別、年齢、EGFR変異タイプ別、前治療の種類、中枢神経系転移の有無、喫煙歴、どの要因についてサブグループ解析を行っても、ハザード比0.50以下で有意にO群の方が優れていた

・今回のAURA3試験で得られたOsimertinibの無増悪生存期間10.1ヶ月、奏効割合71%という成績は、AURA, AURA2試験の結果と符合する

・今回のAURA3試験で得られた白金製剤+ペメトレキセド併用療法の無増悪生存期間4.4ヶ月、奏効割合31%という成績は、IMPRESS試験におけるT790M陽性群の結果と符合する

・リキッドバイオプシーにおける偽陰性の割合を考えると、リキッドバイオプシーでT790M陰性となった患者には組織生検を行ってT790Mを再検索することが推奨される