EAST-LCとAURA3の日本人サブグループ解析

第57回日本肺癌学会総会より

<Plenary session>

PL-1:

<EAST-LC(East Asia S-1 Trial ? Lung Cancer)>

・S-1 vs Docetaxel after platinum doublet, phase III study

・適格基準はPS 0-2, NSCLC, IIIB-IV期、前治療暦は2-3レジメンまで可(EGFR阻害薬使用歴があれば、計3レジメンまではOK)

・患者総数1,154人、ドセタキセル群に577人、S-1群に577人が無作為割付された

・主要評価項目は全生存期間とし、ドセタキセルに対するS-1の非劣勢を検証する

・副次評価項目は無増悪生存期間、治療成功期間、毒性、QoL

・日本、中国、台湾、香港、シンガポールが参加

・2010年7月から2014年7月まで患者登録

・2015年11月にデータカットオフ

・片側検定で有意水準を0.025とし、検出力は80%、非劣勢マージンは1.2と設定

ドセタキセル群は総数570人、うち日本人は359人、年齢中央値は62歳

・S-1群は総数577人、うち日本人は361人、年齢中央値は62歳、

・全体の全生存期間中央値はドセタキセル群で12.52ヶ月、S-1群で12.75ヶ月、ハザード比は0.945(95%信頼区間は0.833-1.073)で非劣勢が証明された

・日本人サブグループにおける全生存期間中央値はドセタキセル群で12.63ヶ月、S-1群で13.37ヶ月、ハザード比は0.922(95%信頼区間は0.789-1.079)

・全体の無増悪生存期間中央値はドセタキセル群で2.89ヶ月、S-1群で2.86ヶ月、ハザード比は1.033

・日本人サブグループにおける無増悪生存期間中央値はドセタキセル群で2.96ヶ月、S-1群で2.92ヶ月、ハザード比は1.043

・全体の奏効割合はドセタキセル群で9.9%、S-1群で8.3%

・ペメトレキセドによる前治療歴、組織型では効果に差はなかった

QoLはS-1の方が有意に優れるものの、QoLスコア差は5.11と、有意(p=0.0025)ながら小さな差だった

・治療中止理由として、ドセタキセル群は毒性中止が、S-1群は病勢進行による中止が多かった

・S-1群でやや後治療がなされた患者が多い傾向にあった

・脱毛、神経障害はドセタキセル群で多かった

・今後、どのようにペメトレキセドと住み分けをするか

・late lineでのS-1+TAS114の第I相試験では、奏効割合が31.3%と良好

・WJOG7512L試験:扁平上皮癌を対象とした、CBDCA+S-1±S-1維持療法の第III相試験がon-going

PL-2:

<AURA3試験>

・EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌と診断され、EGFR阻害薬による一時治療後に病勢進行に至り、T790M耐性変異が確認された患者を対象とした

・2:1の割合でOsimeritinib群(O群)とプラチナ・ペメトレキセド併用療法群(P群)に無作為割付した

・O群は総数279人(うち日本人は41人)、P群は総数140人(うち日本人22人)

・O群は白人32%、アジア人65%、その他3%

・P群は白人32%、アジア人66%、その他2%

・途中でプロトコールが改訂され、P群で病勢進行に至った後はOsimertinibへの治療変更が可能となった

・両側検定、有意水準は0.05、検出力は80%

・日本人サブグループにおける無増悪生存期間中央値はO群で12.5ヶ月(95%信頼区間は6.9ヶ月から未到達)、P群で4.3ヶ月(95%信頼区間は4.0-6.7ヶ月)、ハザード比0.27

・AURA2試験における日本人サブグループの無増悪生存期間中央値は13.9ヶ月だったので、再現性あり

・脳転移を有する患者群でのサブグループ解析では、無増悪生存期間中央値はO群で8.5ヶ月、P群で4.2ヶ月、ハザード比0.32

・脳転移のない患者群でのサブグループ解析では、無増悪生存期間中央値はO群で10.8ヶ月、P群で5.6ヶ月、ハザード比0.40

・全体の奏効割合はO群で71%、P群で31%

・日本人サブグループでの奏効割合はO群で71%、P群で36%

・日本人サブグループでの奏効持続期間はO群で11.1ヶ月、P群で4.1ヶ月

・もともとのEGFR遺伝子変異タイプ別に、効果が若干異なり、Exon 19 deletionの方が効果が高い

・Transient asymptomatic pulmonary opacity(TAPO)

 Noonan et al, J Thorac Oncol 2253-2258, 2016

・Osimertinibによる間質性肺炎発症割合

 全体では10人/279人(4%)

 日本人サブグループでは3人/41人(7%)→Grade 3以上は0人

・AURA3には1,036人がentryしたが、T790Mが確認されて試験に参加できたのは419人

→2−3人に1人しか参加できなかった

・病勢進行が確認されてから再生検が行われるまでの期間中央値が43日間、再生検が行われてからOsimertinibの投与が開始されるまでの期間中央値が29日間、合わせると病勢進行が確認されてからOsimertinibの投与が開始されるまでの期間中央値は72日間、これをいかに短縮するかが今後の課題