最近のPICCカテーテル

通常の点滴で対応が出来ないときに僕らが利用するものとして、中心静脈路カテーテルというものがあります。

手先、足先の血管では、その細さゆえ、一定量以上のカロリーを使うことが出来ません。

刺激が強すぎて、静脈炎を起こしたり、血管が閉塞したりするからです。

また、そもそも薬の特性上、手先足先からは投与できないものもあります。

そういった場合、首、鎖骨の下、脚の付け根のうちどこかから、点滴の管を入れて心臓の辺りまで入れます。

この管によって、高カロリーの点滴や特殊な薬が使えるようになりますし、そもそも漏れることがありません。

ただし、いいことばかりではありません。

この管を介して、体の外と血管内が絶えず交通していることになりますので、常に感染の危険性があります。

また、管を挿入する際に、首であれば頚動脈損傷、鎖骨の下であれば気胸(肺のパンク)の危険性があります。

これら合併症と、カテーテルを入れることのメリットを天秤にかけて判断しなければなりません。

そういった意味で、とても悩む患者がいました。

90歳を超えた方で、食事があまり取れず、かといって血管がもろくて点滴もままならない。

通常の中心静脈路カテーテル挿入には本人・家族とも難色を示す。

経鼻胃管も拒否。

・・・いろいろ悩んだ挙句、6年ぶりに末梢挿入型中心静脈路カテーテルを使用することにしました。

前回はがんセンターの血液・腫瘍内科に在籍していたころで、血液腫瘍の患者さんに対して挿入しました。

長期間にわたって抗癌薬と栄養補給の点滴が出来るように、ということで、挿入時の合併症や感染のリスクが少ない肘の静脈から挿入しました。

肘を曲げられないというデメリットはありますが、これはこれでいい治療だなと思っていました。

医療器材の業者さんに何件か問い合わせて、ようやく思ったとおりのものが手に入ったので、昨日挿入しました。

PICCカタログ130711

最近のものはご丁寧にガイドワイヤー付やダブルルーメン(1本の管から、同時に2種類の薬を別々に点滴できる)といったものまであるようですが、結構なお値段です。

最近は肘の静脈ではなくて、上腕の脇に近い方の静脈(尺側上腕静脈)から挿入するのが主流だそうですが、体表からは見えない血管なのでエコーで確認します。

上腕静脈エコー図130711

今回は右上腕から挿入しましたが、感覚的には右大腿から挿入するときと似た感触でした。

管自体がとても柔らかなため、先端を確認しながら挿入するために透視装置を併用しました。

次の図が出来上がり図です。

PICC挿入後外観130711

この位置なら、肘を曲げてもあまり気になりません。

点滴も採血もできるような機構になっているようで、看護スタッフと相談しながら試してみようと思っています。

少なくとも、挿入する時点での合併症リスクはほとんどないので、患者さんにとっては優しい治療だと思います。