Durvalumabの第II相試験−ATLANTIC study

 Osimertinibとの併用療法で高頻度に間質性肺炎が出現したDurvalumab。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e852243.html

 単剤としての治療成績が報告されていた。

 主要評価項目が奏効割合なのでこの内容でも成り立つのかも知れないが、PD-L1高発現群を対照とするようにプロトコール改訂が行われたこと、観察期間中央値が短くて生存期間の評価にはまだ時期尚早であること、この種の薬の常として、無増悪生存期間の結果がかならずしも全生存期間の延長にはつながらないであろうことなど、注意しながら結果を見たい。

 また、無増悪生存期間の代わりに、症状コントロールQoLに関する効果を見てみたい。

 それでも、3次治療以降に対象患者を敢えて設定した研究者の心意気そのものを評価したい。

 しかし、既治療に免疫チェックポイント阻害薬が使われていた場合、今回の結果を適用してよいのかどうか、みんな頭を悩ますところだろう。

 PD-L1発現のカットオフ値も、25%やら90%やらが出現している。

 免疫染色に使われる抗体は様々、その際のカットオフ値も1%、25%、50%、90%などとさまざま。

 カットオフ値を統一して、患者をきれいに二分してほしい。

 

 

Study Finds Durvalumab of Benefit in Advanced and Metastatic Non?Small Cell Lung Cancer

By Meg Barbor

February 10, 2017

2016 World Conference on Lung Cancer. Abstract PL04a.03. Presented December 7, 2016.

Reference

1. Garassino MC, Vansteenkiste JF, Kim J, et al: Durvalumab in ? 3rd-line locally advanced or metastatic, EGFR/ALK wild-type NSCLC. 2016 World Conference on Lung Cancer. Abstract PL04a.03. Presented December 7, 2016.

 Durvalumabは選択的で親和性の高い抗PD-L1モノクローナル抗体で、PD-L1とPD-1が結合するのを阻害する。PD-1/PD-L1抗体は進行非小細胞肺癌患者に有効だが、2レジメンの化学療法後に病勢進行に至った患者については、標準治療が乏しいことから、未だに予後不良である。

 ATLANTIC studyはオープンラベル、単アームの臨床試験で、プラチナ併用化学療法を含む少なくとも2レジメンの薬物療法を受けたIIIB/IV期の非小細胞肺癌患者を対象とした。開始当初は上記を満たす全ての患者を組み入れていたが、途中からPD-L1高発現の患者(腫瘍細胞の25%以上において、抗PD-L1抗体免疫染色により細胞膜が染色される患者)のみを対象にした。

 本試験では、独立した3群のコホートを設定されたが、2016年の世界肺癌会議では、コホート2のうち265人(PD-L1発現が<25%の群と≧25%の群)とコホート3のうち68人(PD-L1発現が≧90%の群)について結果が報告された。

 

 患者はDurvalumab 10mg/kgを2週間ごとに点滴静注され、最高12ヶ月まで治療を継続した。コホート2の患者のうち60%、コホート3の患者のうち40%が4レジメン目以降の治療としてDurvalumabを使用する、いわゆる"haevily treated"の患者だった。主要評価項目は奏功割合とした。

 患者背景はコホート2、コホート3ともほぼ同様だった。過去の治療レジメン数の平均は、コホート2では3.2レジメン(患者のうち20.8%は扁平上皮癌患者)、コホート3では2.6レジメン(29.4%は扁平上皮癌患者)だった。

 PD-L1発現が高い患者群(PD-L1発現腫瘍細胞数≧25%)では、奏功割合も高かった。しかし、なんらかの治療効果は全ての患者群で認められており、過去の治療レジメン数との関連はなかった。特筆すべきは、中枢神経系の転移巣を有する患者でも治療効果が得られたことだった。

 以下、(コホート3、コホート2のPD-L1発現≧25%群、コホート2のPD-L1発現<25%群)について述べる。

 奏効割合は、(30.9%、16.4%、7.5%)だった。Durvalumabの治療効果は持続的で、1年生存割合は(50.8%、47.7%、34.5%)だった。

 観察期間中央値は(7.0ヶ月、9.4ヶ月、9.3ヶ月)だった。

 無増悪生存期間中央値は(2.4ヶ月、3.3ヶ月、1.9ヶ月)だった。

 ほとんどの有害事象は軽微であり、治療の延期あるいは免疫抑制療法で対応可能だった。Grade3以上の治療関連毒性はコホート2の8.3%、コホート3の17.6%に認めた。しかし、治療中断につながるほどの毒性は、コホート2の3%、コホート3の1.5%に留まった。

 現在、Durvalumab単剤療法と、Durvalumabを含めた多剤併用療法の第III相試験が進行中である。