新型コロナウイルスによる小・中・高長期臨時休校のインパクト

 はっきりいって、肺がん診療とは直接関係のない話だが、あまりに社会的なインパクトが大きい話なので取り上げる。

 2020年02月27日の新型コロナウイルス感染症対策本部会合で、安倍晋三首相は感染拡大を防止する目的で、2020年03月02日から春休みが明けるまで、全国の小・中・高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請すると表明した。

 早い話が、来週から夏休みより長い春休みが始まり、多分部活も塾も学童保育もないですよ、ということだ。

 

 驚いた。

 教育の現場は、寝耳に水だろう。

 先日から、体温と症状を記入した健康カードを毎日提出するように学校から求められていたが、そんなの一気に吹っ飛んだ。

 数時間前には、今週末、部活の練習試合がありますと連絡が来ていたが、もはやよくできた笑い話だ。

 他人事ではない。

 一般企業はもとより、病院にも、それも忙しい職場であればあるほど、お子さんの小さな若手のスタッフがたくさん働いている。

 小学生のいる共働き家庭は、いったいどうするのだろう。

 みんなが仕事をできなくなったら、外来も、病棟も回らなくなってしまう。

 一足早く、管内の小・中学校の臨時休校が決まっていた北海道で、帯広厚生病院では2020年02月28日から診療制限に踏み切ることが決まっていたという。

 新規患者、予約外患者の診療を休診し、2020年03月01日以降は病棟の一部を使用休止する予定だったようだ。

 ただし、この措置は2020年03月04日までとされていたが、上記の政府方針からすると、大幅に延長されることになる。

 病院診療だけを考えても、こうした影響が全国規模で広がることになる。

 この措置は、劇薬だ。

 吉と出るか凶と出るかは神のみぞ知るだが、このくらい思い切った対応、確かに必要なのかもしれない。

 インフルエンザは、教育の現場から子供に感染が拡大し、一緒に住む親や祖母の世代に広がっていく。

 また、私の勤務先の近所の大学では、毎年インフルエンザの患者が蔓延する。

 新型コロナウイルスも、季節性インフルエンザほどの急速な広がりは見せていないものの、似たようなストーリーは十分考えられる。

 今回の措置は、教育の現場における感染拡大を断ち、それに続く各家庭における感染の起点を断つ試みであり、英断だ。

 震源地の中国からの報告によると、新型コロナウイルスPCR陽性で、いったん陰性化した患者の14%は再陽性化するらしい。

 我が国でも、大阪で同様の現象が確認されている。

 たちが悪いこと極まりない。

 最善を期待して、最悪に備えるべし。

 外来化学療法を受けている患者さんにも、少なからず影響があるだろう。

 東日本大震災の時のように、一定のエリア内で、患者の融通をする必要が出てくるかもしれない。