Lung Cancer Symposium in Oita

昨夜、大分オアシスタワーホテルで標記の研究会がありました。

雨天ながら、80名を超える参加者が集まりました。

会に先立って、現在進行中のドセタキセル+ベバシツマブ併用化学療法の臨床試験進捗状況について小会合がありました。

参加施設の倫理委員会承認作業が進んでおり、そろそろエンジンがかかってきそうです。

研究会では、3人の演者の先生方がご講演くださいました。

1人目は、大分大学医学部 腫瘍・血液内科学講座 森永亮太郎先生です。

「非小細胞肺癌に対するBevacizumabの適応 -有害事象対策について-」

と題し、実地臨床におけるBevacizumabの上手な使い方、適切な有害事象対応をご指導くださいました。

私の患者さんも、鼻出血、高血圧、蛋白尿など結構な頻度で合併していました。

どんな状況では休薬するか、どんな状況では有害事象に対して積極的な治療を行うか、有益な情報を教えていただきました。

2人目は、産業医科大学医学部 呼吸器内科学講座教授 迎寛先生です。

「薬剤性肺障害の早期診断と治療」

と題し、臨床の現場ではしばしば遭遇するとは言いながら診断・対処が難しい薬剤性肺障害に関して、呼吸器学会の手引きを基調として、ご自身の豊富な経験を交えつつご解説いただきました。

薬剤性肺障害における原因薬剤として抗癌薬が圧倒的に多く、とくに分子標的薬では開始後1ヶ月は要注意であることなど、再認識させてくださいました。

3人目は、順天堂大学大学院医学研究科 呼吸器内科学講座教授 高橋和久先生です。

「EGFR-TKIが切り開く新しい肺癌治療の世界」

と題し、発売から10年を超えたgefitinib、5年目を迎えたerlotinibのエビデンスや使い分けについて、これまでの臨床試験結果を俯瞰してまとめていただきました。

ことに、EGFR遺伝子変異陰性例でもerlotinibには一定の効果が期待できることを、さまざまな報告をもとに示していただきました。

会が終わったあと、司会の白尾国昭教授・座長の宮崎英士教授、門田淳一教授、杉尾賢二教授・演者の森永先生、迎教授、高橋教授に混じって、何故か私も小宴にお供させていただきました。

その席上、高橋教授から、

「分子標的薬をはじめとした新薬の臨床開発が年々加速していて、わが国でも有望な薬を早期承認、できれば基礎研究における新薬発見から実地臨床への導入までの期間を4年程度にすることを目標に努力したいと思っている。PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)の識者を招いて、来年の学会でシンポジウムを企画したいのだが、誰か窓口になってくれる人を知らないか」

とのお話があり、たまたまひとり知人がPMDAにいたので、紹介させていただきました。

イレッサ訴訟のことなど考えると、新薬の取り扱いにはそれなりの配慮が国にも医療従事者にも必要だとは思いますが、せめて世界と同程度には承認が早く進むようにしてほしいですね。