担当患者さんたちの近況

 肺がん診療以外の仕事が多くて、なかなかブログの更新が進みません。

 本当は最近の話題に触れたいのですが、今回は担当患者さんの近況について覚書を。

1)放射線化学療法後再燃した局所進行扁平上皮癌の方、PS1

 途中、帯状疱疹に見舞われて治療延期を余儀なくされましたが、カルボプラチン+アブラキサン併用療法が3コースまで終了しました。

 途中血痰が出るとのことで気管支鏡を行いましたが、気管分岐部前面腫瘤のエタノール局注除去後の断端が少し右主気管支に張り出していました。

 一方、左主気管支はほぼ腫瘍性病変がなくなりました。

 右主気管支前方の、リンパ節病巣がある部位が活動期の胃潰瘍病変のように深くえぐれています。

 腫瘍縮小効果によるものと考えていますが、ここから縦隔炎を起こさなければいいが、というのが目下一番心配なことです。

 貧血以外の骨髄抑制には全く見舞われず、安全に治療を継続できています。

 3週間1コースで、1コースあたりの抗がん薬・制吐薬の薬価は概算で39万円です。

2)脳転移・脳浮腫を有する進行腺癌の方、PS2(脳浮腫抑制のため、デカドロン1mg、メニレットゼリー使用中)

 EGFR遺伝子変異、ALK再構成いずれも陰性だったこと、PS2であることから、カルボプラチン+アリムタ併用療法を開始しました。

 咽頭痛、Grade3の血小板減少に見舞われましたが、そろそろ有害事象の峠を越えました。

 来週には2コース目を開始します。

 本人のたっての希望でメニレットゼリーを中止(ゼリーとはいえ、やっぱり苦いそうです)しましたが、その2日後にジャクソン型の痙攣が出現。

 すぐに治まりましたが、メニレットゼリーは1日1個だけ使おう、ということになりました。

 3週間1コースで、1コースあたりの抗がん薬・制吐薬の薬価は概算で30万円です。

3)右肺70mm大の腫瘤、多発脳転移、骨転移、PS4

 未確診のまま経過観察され、その間に腫瘍増大、進行がんとなった方です。

 もともと頭蓋内出血の後遺症があり、積極的な診断・治療が難しい方でした。

 最近入院されて、全身くまなく調べたところ右上腕に病巣があり、エコーガイド下穿刺細胞診の結果腫瘍細胞が検出されました。

 未分化で組織型推定困難とのことで、細胞浮遊液でセルブロックを作ってもらい、免疫染色を行っています。

 また、浮遊液はEGFR遺伝子変異検査に出しました。

 2)の方で、病理診断から遺伝子変異・再構成の判明まで長期間を有したため、今回は至急で病理検査をお願いしたところ、2営業日で結果が返ってきました。

 全体像が判明するまで保存的治療しか出来ません。

 PS4なので積極的治療は難しいのですが、EGFR/ALKに異常が見られたら、分子標的薬を使うかどうか家族に相談するつもりです。

 骨転移に対し、本日2回目のランマーク投与を行いました。

 ランマークの薬価は約45000円です。

 1)、2)の方は医療保護を受けており、国民の税金で治療費を賄っているので、今回は自戒の意味をこめて治療薬価を記載しました。

 1)の方は明らかな病勢進行もしくは有害事象による治療断念までは延々と3週間ごとに治療を続けることになるので、1年間(約17週間)続けたとしたら6630000円の薬価がかかることになります。

 2)の方でも、4コース施行した場合、1200000円の薬価がかかります。