第54回日本肺癌学会総会

 11月21日から22日にかけて、東京のホテルニューオータニで第54回日本肺癌学会総会が開催されました。

 今回の学会長は、国立がん研究センター東病院呼吸器外科の永井完治先生で、私が東病院に在籍していたころ非常にお世話になった先生です。

 キツキツのスケジュールで赴いたためにほんの少ししかご挨拶できませんでしたが、お元気そうなお姿を拝見できました。

 会長講演の際、秘書の柏原さんや高さんが最前列の席で写真を撮っているのも、大変ほほえましい光景でした。

 学会の内容はといえば、抗がん薬領域では新薬の登場よりも維持療法などの新しいコンセプトをどのように位置づけるかという点に主眼が置かれているような感じがしました。分子標的薬は各ターゲット分子に対して複数の治療薬(候補)があって、ついていくのが精一杯という感じです。一度は葬り去られた抗癌薬と分子標的薬の併用のあり方について、効果が期待できる患者に焦点を絞ってちゃんと国内臨床試験で検証しようという動きが出てきており、これは大歓迎です。また、後藤功一先生をはじめとした東病院のオールスターズが推し進めているLC-SCRUM JAPAN(希少な遺伝子変異を有する患者の全国規模での検索と、臨床試験への橋渡し)の活動にも米国と同じような広がりが出始めているようで、私も対象患者が出てくれば参加させていただきたいと思っています。また、今回の学会では2015年に改訂される肺癌のWHO組織分類を意識したシンポジウムやワークショップが多数準備されていて、楽しく拝聴しました。純粋な病理(形態)学と、より実臨床に寄り添った免疫組織化学や遺伝子変異診断学について、どのように折り合いをつけて先進国、途上国を問わずワールドワイドに適用できる分類を作るのか、国立がん研究センター中央病院呼吸器外科の淺村先生や、東病院病理部の石井先生のお話を伺って、改めて考えさせられました。

 個々の内容については、興味がある順に後日掘り下げて触れたいと思います。

 最終便で大分に帰ってきて、車を運転しながらNHKラジオを聴いていると、香山リカ先生の番組がかかりました。

 「これまで円満に暮らしてきましたが、夫のクレジットカードの明細を見ていると不審な出費が定期的にあります。どうも女性にプレゼントなどを贈っているようです。知らない振りをして過ごすべきか、問いただすべきか、悩んでいます」

とのリスナーの相談に対して、

 「ここまで分かっていて、知らない振りをして過ごすのは無理でしょう。私たち医師が、こういう気まずい話を無理なく患者さんと話し合うときのテクニックをお伝えしましょう。まずはご主人に、「今夜、ちょっと話があるんだけど、いい?」など、話をするお約束をしましょう。前触れなしにいきなりクレジットカードの明細を見せて、居丈高に迫るのはかえって相手をパニックに追い詰めて、逆ギレなどを起こさせて話をややこしくしてしまいます・・・(中略)・・・大切な話はシンプルに伝えて、必要に応じて沈黙して、ご主人に考える時間をつくってあげましょう・・・云々」

 これは、いわゆる臨床腫瘍学における「悪い知らせの伝え方:SPIKES」そのままです。まさかこんなところで紹介されるとは思いませんでした。

 しかし、浮気を問いただす場において、「perception」「invitation」の段階がどのようにすすめられるのか、ちょっと想像できませんね。

 話がよく分からない、という方は、以前運営していた下記ブログ

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/

の2011年1月ごろの記事をご参照ください。

 「悪い知らせの伝え方」「SPIKES」について解説しています。