アファチニブ=ジオトリフ

 去る11月18日、「第3のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬」アファチニブ(商品名ジオトリフ)の承認申請が、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において了承されました。効能・効果は「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌」です。

 アファチニブは、ErbBファミリー(EGFR/ErbB1、HER2/ErbB2、ErbB4)を阻害する不可逆的経口剤で、米国で2013年7月に、欧州で2013年9月に承認されました。日本肺癌学会で聴講したところによると、国内では2014年前半に使用可能になるだろうとの見通しでした。

 アファチニブに関連した臨床試験は、「LUX-Lung〇」というコードネームがつけられています。

 

1)LUX-Lung 1(Lancet Oncol 2012; 13:528-38)

 1もしくは2レジメンの化学療法と、ゲフィチニブもしくはエルロチニブによる12週間以上の治療の後に病勢が進行した患者を対象として、アファチニブ投与群と偽薬群を比較したpIIb/III試験。残念ながらアファチニブは全生存期間を延長することは出来なかった。

2)LUX-Lung 2(Lancet Oncol 2012;13:539-48)

 1レジメンまでの化学療法を受け、EGFR阻害薬は使用したことのない、EGFR遺伝子変異を有する進行肺腺癌の患者を対象に、アファチニブを投与する第2相試験を行った。奏効割合は61%。エクソン19の欠失変異もしくはエクソン21の置換変異といった主たる変異形式を示した患者では奏効割合は66%、それ以外の比較的頻度の少ない変異形式では39%であった。

3)LUX-Lung 3(J Clin Oncol 2013; 31:3327-34)

 EGFR遺伝子変異陽性の進行肺腺癌の患者を対象に、アファチニブ投与群とシスプラチン+ペメトレキセド併用化学療法群の無増悪生存期間を比較する第III相試験を行った。アファチニブ群、シスプラチン+ペメトレキセド群の無増悪生存期間はそれぞれ11.1ヶ月、6.9ヶ月で、アファチニブ群が優れていた。

4)LUX-Lung 4(J Clin Oncol 2013; 31:3335-41)

 gefitinibもしくはerlotinibによる治療を12週間以上受けた後に病勢が進行した日本人患者を対象に、アファチニブを投与する第II相試験を行った。治療を受けた62人の患者のうち、45人(72.6%)はEGFR遺伝子変異陽性だった。奏効割合は8.2%、無増悪生存期間中央値は4.4ヶ月、生存期間中央値は19ヶ月だった。主な有害事象は下痢(100%)、皮疹(91.9%)だった。有害事象のために治療を中止した患者は18人(29%)だった。

 LUX-Lung 3試験についてはまだ全生存期間のデータがまとまっておらず、これを待たないと適正な評価は難しいと思います。

 毒性の強さはゲフィチニブ<エルロチニブ<アファチニブという雰囲気で、LUX-Lung 4の結果を見る限り、エルロチニブ耐性となったあとの治療選択枝が増える、という意味では有望ですが、EGFR遺伝子変異の患者に最初から使用する、というのはまだ控えた方が良さそうです。

 EGFRへの親和性を強化した薬、耐性遺伝子変異そのものを治療標的とした薬など、まだまだEGFRを標的とした治療はさまざまな切り口から治療薬開発が進んでいて、目が離せません。