各種EGFR遺伝子変異阻害薬によるT790M変異の誘導

 EGFRの二次耐性変異、Exon 20, T790Mに対して有効な第3世代EGFR阻害薬の登場が、すぐそこまで来ています。

 2016年2月26日に薬事・食品衛生審議会、医薬品第二部会でこの分野の嚆矢となるであろうosimertinib(タグリッソ)の審議が予定されています。

 また、この際には、同じくALK阻害薬のceritinib(ジカディア)も審議される模様です。

 承認されれば、約1か月後、もしかしたら新年度に入ると同時、くらいのスピード感で使用可能になるかも知れません。

 この動きを見越して、gefitnib、erlotinib、afatinib使用中で、治療効果が得られなくなってきた患者さんでは、再生検を行う動きが活発化しています。

 第3世代EGFR阻害薬使用の条件として、「T790M変異が陽性の患者」という条件が付く可能性が高いからです。

 再生検で本遺伝子変異を確認しなければなりません。

 EGFR阻害薬に耐性化した場合、T790M陽性である割合は、国内では50-60%程度と目されています。

 第3世代EGFR阻害薬が使えるようになると、仮に耐性化したとしてもT790Mであれば、その後の治療の見通しが立てやすくなります。

 そのため、再生検の技術を磨くのはもちろん大事ですが、臨床の現場ではいかにほかの変異ではなくてT790M変異に腫瘍を誘導するか、といった、理に適ってはいるものの見通しはまったく立たない、だれもどうすれば誘導できるのかわからない、といった議論があちこちでなされています。

 昨年11月の日本肺癌学会総会では、各EGFR阻害薬を使用した際に、どの程度の頻度でT790M変異が出現するかについて、まとめられていました。

 この際は、gefitinib、erlotinibはほぼ同等で、afatinibはやや頻度が少ないながら、もともとafatinibを使用された患者さんの数が少ないために、判断しにくい面がありました。

 最近台湾大学のJames Yang先生のグループからafatinib投与後の患者さんにどの程度T790M変異が出現したかを調べた論文が出たようです。

The mechanism of acquired resistance to irreversible EGFR tyrosine kinase inhibitor-afatinib in lung adenocarcinoma patients.

www.impactjournals.com/oncotarget 2016

 これによると、afatinib治療歴があり、afatinib耐性となった患者さん42人に対して再生検を行ったところ、20人(47.6%)にT790M変異が検出されたそうです。

 我が国のデータと並べて見てみると、gefitnib、erlotinibのデータとあまり変わりないように見えます。

 それでも患者数が一ケタ違うため比較は難しいのですが、参考までに。