肺がんスクリーニングに対する家庭医の意識調査

 家庭医にとってはCTによる肺がんスクリーニングは必ずしも普及していないようです。

 レントゲンに比べれば明らかに見落としが少なくなると思うのですが、米国の家庭医の中に、患者さんのCTスクリーニングを行うことが" stress ", "anxiety "と感じる方が半数以上いる、というのは、ちょっとショックでした。

 「CTスクリーニングをして、万が一見落とすと訴訟問題になってしまう」

といった計算があるのかも知れませんが、ちょっと寂しい話です。

<多くの家庭医は、肺癌スクリーニングに関して誤った知識を持っている>

By The ASCO Post

Posted: 6/15/2016 12:17:40 PM

 National Lung Cancer Screening Trial(NLST)臨床試験の結果、低線量CTによる肺癌スクリーニングは胸部レントゲンによるスクリーニングと比較して、より早期の肺癌を検出し、肺癌による死亡率を20%低下させ、全死因による死亡率をも6.7%低下させることが明らかにされたが、最近の調査では、こうしたスクリーニングが肺癌関連死を減少させることに同意する家庭医は半数にも満たないことがわかった。こうした家庭医のほとんどは、ハイリスク患者における肺癌スクリーニングの最近の推奨事項についてよく知らないことも分かった。Cancer誌に掲載されたErsekらによる論文は、適切な肺癌スクリーニングに対する家庭医の知識にギャップがあることを示した。

 肺癌は米国における癌死の原因の第1位で、その理由のひとつに、ほとんどの患者は診断時点で既に進行期にあることが挙げられる。米国疾病予防タスクフォース、メディケア、その他多数の各種機関は、現在もしくは過去の喫煙者のようなハイリスク患者では、低線量CTによるスクリーニングをサポートしている。しかしながら、低線量CTによるスクリーニングを推奨するにはいまだエビデンスが不足している、もしくは推奨できないと主張する団体もある。

 家庭医の低線量CTによる肺癌スクリーニングに関する知識、姿勢、実地臨床のあり方を評価するため、サウスカロライナ大学のJan Eberthらは2015年にサウスカロライナ家庭医協会に所属するメンバーに対して、32の質問による調査を行った。

 回答を寄せた101人のうち、ほとんどは肺癌CTスクリーニングに対する各種機関の推奨事項に対して誤った知識を持っていた。回答者の98%は低線量CTスクリーニングにより肺癌を早期に発見できるだろうと感じている一方で、肺癌関連死を減少させると考えているのは41%に過ぎなかった。回答者の75%が低線量CTによる利益が潜在的放射線毒性に勝ると感じている一方で、88%は低線量CTスクリーニングは不必要な検査と考え、52%は低線量CTスクリーニングが医師にとってストレスもしくは憂鬱の種と感じ、50%は放射線暴露を気にしているようだった。

 回答者の75%が、ある程度の理解力を持つ患者との間で、低線量CTスクリーニングの利点・欠点を議論しているのだが、回答者の半数以上は過去1年の間に1度スクリーニングを推奨したことがあるかないかだった。60歳の患者で、30 pack-yearの喫煙量の患者に対して低線量CTスクリーニングを勧めるかどうかという質問をしたところ、こうした患者におけるスクリーニングとしては低線量CTのみが確たる根拠を有するにも関わらず、回答者の12%は一切のスクリーニング検査を推奨しないと答え、9%は胸部レントゲンを推奨すると回答した。