stage IB期の非小細胞肺癌に対する術後補助化学療法

 非小細胞肺癌の術後補助化学療法の分野は、我が国と欧米では若干考え方が異なる、というのは最近別の記事でお示しした通りです。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e854713.html

 しかし、米国でもIB期の肺がんには術後補助化学療法をした方がよさそうだ、とする報告が出てきたようです。

 後方視的研究ながら、25,000人を超える患者さんを取り扱っており、無視はできません。

 要約からでは、具体的にどのような化学療法が行われたのかは定かではありませんが、おそらくUFTということはないでしょうね。

Adjuvant Chemotherapy for Patients with T2N0M0 Non-small-cell Lung Cancer (NSCLC).

Morgensztern et al.

J Thorac Oncol. 2016 Jun 8 [Epub ahead of print]

背景:

 完全切除後の病理病期II期もしくはIII期の非小細胞肺癌患者において、術後補助化学療法は生存期間を延長する。しかし、病理病期IB貴の患者における術後補助化学療法の意義は明らかでない。今回は、完全切除後の病理病期T2N0M0の非小細胞肺癌患者における術後補助化学療法の役割を、大規模患者データから探ってみた。

方法:

 2004年から2011年にかけて、病理病期T2N0M0と診断された完全切除後非小細胞肺癌患者をNational Cancer Database(NCDB)から抽出し、腫瘍径が3.1-3.9cm, 4.0-4.9cm, 5.0-5.9cm, 6.0-7.0cmの4群に分類した。術後1ヶ月以内に死亡した患者は除外した。生存曲線はカプラン・マイヤー法で作成し、生存曲線間の比較にはログランク検定を用いた。

結果:

 25,267人の患者が適格基準を満たし、そのうち4,996人(19.7%)が術後補助化学療法を受けていた。術後補助化学療法を受けた群は、受けなかった群と比較して、生存期間中央値、5年生存割合ともに有意に優れていた。腫瘍径4cm未満の患者では、術後補助化学療法は生存期間中央値、5年生存割合のいずれでも単変数解析(101.6ヶ月 vs 68.2ヶ月、67% vs 55%, ハザード比0.66、95%信頼区間0.61-0.72, p<0.0001)、多変数解析(ハザード比0.77, 95%信頼区間0.70-0.83, p<0.0001)双方で有意に優れていた。

結論:

 完全切除後の病理病期T2N0M0の患者では、術後補助化学療法はどの腫瘍径の患者群においても予後の改善と相関していた。腫瘍径4cm未満の患者でも術後補助化学療法の恩恵が得られるということは、この患者群においても術後補助化学療法の意義があることを示しており、この患者群を術後補助化学療法の臨床試験から除外している現状を見直すべきである。