ceritinibによるALK陽性肺がんの一次治療

 ALK陽性進行肺癌に対するceritinibの一次治療が、化学療法に対して無増悪生存期間を有意に延長することが報告された。

 

 これで、ALK陽性進行肺癌の一次治療としてエビデンスを有する薬が3種類になった。

 J-ALEX試験の結果が報告されてから1年もたたない。

 個人的には、"more effective, less toxic"の原則に基づいて治療選択をする。

 病勢進行した際に、次治療をどのように選択するかが今後の課題だが、体制が整えばEGFR変異陽性肺癌と同様、再生検をして、病勢進行のメカニズムを明らかにして臨むべきだろう。

 また、化学療法群でも全生存期間が確実に2年を超える、というのは朗報だ。

 何らかの理由で初回診断時にALK検索ができず、化学療法から導入した患者でも、治療経過中に再生検してALK検索をするチャンスが出てこないか、担当医は常に意識しておくべきだ。

Phase III Trial Finds First-Line Ceritinib Improves PFS vs Platinum-Based Chemotherapy in ALK-Rearranged NSCLC

By Matthew Stenger

Posted: 2/2/2017 9:35:13 AM

Last Updated: 2/2/2017 9:35:13 AM

First-line ceritinib versus platinum-based chemotherapy in advanced ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (ASCEND-4): a randomised, open-label, phase 3 study

Soria JC et al, Lancet 2017

DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(17)30123-X

 Lancet誌に報告された第III相臨床試験(ASCEND-4)において、SoriaらはALK陽性進行非小細胞肺癌の一次治療でceritinibがプラチナ併用化学療法と比較して無増悪生存期間を延長することを示した。ceritinibは次世代選択的ALK阻害薬であり、in vitroではcrizotinibよりも高度のALK阻害活性を示していた。ceritinibはcrizotinib耐性もしくは毒性によりcrizotinib継続困難なALK陽性進行非小細胞肺癌の治療薬として既に承認されている。

 今回のASCEND-4試験はオープンラベル試験で、stage IIIB / IV期のALK陽性非扁平・非小細胞肺癌患者376人が、28か国、134施設(欧州、アジア、ブラジル、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド)から参加した。2013年8月から2015年5月までにceritinib群(189人)と化学療法群(187人)に割り付けられた。ceritinibは750mg/日を内服した。化学療法群ではシスプラチン+ペメトレキセド併用療法か、カルボプラチン+ペメトレキセド併用療法を3週間ごとに4コース行い、ペメトレキセド維持療法も適応があれば行った。

 無作為割付はPS、術前・術後補助化学療法の有無、脳転移の有無を割付調整因子として行った。主要評価項目は無増悪生存期間とした。安全性評価は、一度でも試験治療薬の投与を受けた全ての患者で行った。

<患者背景>

 ceritinib群 vs 化学療法群として以下を示す。年齢中央値:55歳 vs 54歳、女性:54% vs 61%、白人:55% vs 52%、アジア人:40% vs 44%、PS0:37% vs 37%、PS1:57% vs 56%、PS2:7% vs 6%、非喫煙者:57% vs 65%、腺癌:95% vs 98%、IV期:95% vs 97%、骨転移:41% vs 43%、脳転移:31% vs 33%、肝転移:18% vs 21%、手術歴あり:23% vs 23%、放射線治療歴あり:20% vs 21%、脳への放射線治療歴あり:13% vs 14%(そのうち、無作為化から3ヶ月以内の治療歴:92% vs 89%)、術後補助化学療法歴あり:5% vs 4%、術前化学療法歴あり:0% vs 1%

<無増悪生存期間解析>

 無増悪生存期間についての追跡調査期間中央値は19.7ヶ月だった。独立評価委員会によると、無増悪生存期間中央値はceritinib群16.6ヶ月(95%CI 12.6-27.2ヶ月) vs 化学療法群8.1ヶ月(95%CI 5.8-11.1ヶ月)で、ハザード比は0.55、p値<0.00001だった。担当医評価では、ceritinib群16.8ヶ月 vs 化学療法群7.2ヶ月で、ハザード比0.49、p<0.00001だった。ハザード比はおしなべてそのサブグループ解析でもceritinibで良好な傾向にあり、そのほとんどで統計学的な有意差がついた。

 脳転移を有する患者群を独立評価委員会が調べたところ、ceritinib群と化学療法群の間に無増悪生存期間の有意差はつかなかった。無増悪生存期間中央値はceritinib群10.7ヶ月(95%CI 8.1-16.4ヶ月) vs 化学療法群6.7ヶ月(95%CI 4.1-10.6ヶ月)、ハザード比0.70(95%CI 0.44-1.12)だった。脳転移のない患者群では、無増悪生存期間中央値はceritinib群26.3ヶ月(95%CI 15.4-27.7ヶ月) vs 化学療法群8.3ヶ月(95%CI 6.0-13.7ヶ月)、ハザード比0.48(95%CI 0.33-0.69)だった。

<全生存期間、奏功割合の解析>

 解析時点で、全生存期間のデータは不十分(最終解析に必要なイベント数の42%しか確認されていない)だった。生存期間中央値はceritinib群で未到達(95%CI 29.3ヶ月以上)、化学療法群で26.2ヶ月(95%CI 22.8ヶ月以上)で、ハザード比は0.73(p=0.056)だった。2年生存割合はceritinib群で70.6%、化学療法群で58.2%だった。今回の解析では、全生存期間に関する有効中止基準を満たさなかった。化学療法群145人中105人(72%)は化学療法中止後にALK阻害薬を使用しており、そのうち80人はceritinibを使用していた。

 奏効割合はceritinib群で72.5%、化学療法群で26.7%だった。奏効に至るまでの期間中央値はceritinib群で6.1週間、化学療法群で13.4週間、奏効持続期間中央値はceritinib群で23.9ヶ月、化学療法群で11.1ヶ月だった。

 

<有害事象>

 (ceritinib群 vs 化学療法群)の主な有害事象は、ceritinib群でより高頻度だったものとして下痢(85% vs 11%)、嘔気(69% vs 55%)、嘔吐(66% vs 36%)、ALT上昇(60% vs 32%)、AST上昇(53% vs 19%)、γGTP上昇(37% vs 10%)、食欲不振(34% vs 31%)だった。その他、貧血(15% vs 35%)、好中球減少(5% vs 22%)、白血球減少(18% vs 4%)は化学療法群の方が頻度が高かった。Grade 3 / 4の有害事象としては、ALT上昇(31% vs 3%)、γGTP上昇(29% vs 2%)、AST上昇(17% vs 2%)が挙がった。

 

 Grade 4のQT延長、torsade de pointes、Hy's law該当(薬剤性肝障害の予後予測スコアで、?ASTもしくはALTが、正常上限の3倍を超える、?総ビリルビン値が正常上限の2倍を超える、?ALPが正常値に近い、?他の肝障害となる原因が否定されている、の?−?を全て満たす場合、肝障害による死亡率が10-50%に至るとされる)、膵炎はいずれも認めなかった。間質性肺炎は(2% vs 1%)で認めた。

 投与量減量もしくは投与中断を余儀なくされた有害事象は(80% vs 45%)で発生し、ceritinib群では胃腸障害と肝障害の割合が高かった。治療薬による有害事象で治療中止に至った患者は、(5% vs 11%)だった。治療薬の最終投与から30日以内の患者死亡は(6% vs 3%)で認めたが、治療関連死と判断された患者はいなかった。