今年のASCOの話題を見ていてなんとなく感じたのが、gefitinibの活躍の場が減っていそう、ということだ。
私が医師になったのが1999年。
gefitinibが実地臨床で使えるようになったのが2002年の夏。
思えば、内科医として肺癌の診療をすることの限界というか、虚しさというか、つらさを感じていた時期だった。
シスプラチンでこんなにつらい思いをしても、たった数ヶ月しか寿命が延びないのか・・・。
年をとってから肺癌になったというだけで、治療の選択肢がなくなってしまうのか・・・。
そんな中で、鳴り物入りで登場したのがgefitinibだった。
1日1回1錠だけ、7000円と高価だけど、薬を飲めばいい。
それだけでも、結構な衝撃だった。
これまでシスプラチンを点滴して、1週間嘔吐し続けた患者の立場はどうなる。
薬剤性肺障害による社会的な糾弾を受けたり、EGFR遺伝子変異と有効性の関係が明らかになって薬物療法の概念を一変させたり、最近では術後補助化学療法のpositive dataが出たり、ずっと肺癌薬物療法の考え方に一石を投じ続けている。
そして今年、実地臨床導入から15年目を迎えた。
試みに、身の回りのEGFR陽性肺がん患者さんのデータを、整理できる範囲でまとめてみる。
実際には、データ入力不足の患者が少なからずいるし、手術患者の中にもEGFR検索をしていない人がいるので、あまりきれいなデータではない。
そのときが来たら、きちんとしたデータを出したい。
中には、gefitinibを飲み続けながら、12年近く頑張っている方もいる。
・総数:106人
・男性33人、女性73人
・年齢中央値は73歳(38歳−90歳)
・手術を受けた患者は45人、手術を受けられなかった患者は61人
・腺癌が100人、腺扁平上皮癌が1人、分類不能が1人、扁平上皮癌が6人
・IA期が41人、IB期が17人、IIA期が3人、IIIA期が6人、IIIB期が6人、IV期が33人
・生存期間中央値は1015日(12日−4331日)、5年以上生存している患者は29人、5年生存割合は27%
・gefitinibを服用した患者は44人
・gefitinibを服用した患者の生存期間中央値は823日(42日-4331日)
・gefitinibを服用した患者で5年以上生存している患者は8人、5年生存割合は18%