今年のBest of ASCOの2日目は、モーニングセミナーもランチョンセミナーも、話題は肺癌だった。
私のように肺癌診療を主たる仕事にしているものにとってはいいものの、一般の腫瘍内科医にとってはどうなのだろう。
Best of ASCOに来ると毎年思うのだが、壇上に上がるのはたいてい臓器別のspecialistであって、臓器横断的な腫瘍内科医ではない。
これって、臨床腫瘍学会のあり方としてどうなんだろう。
結局臓器別のspecialistがイニシアチブをとらざるを得ないということか。
ALK肺癌の領域は、物語としては面白い。
ALK肺癌が見出されてから10年、これまでの治療開発過程はとてもドラマティックだった。
そして、昨年のASCOでJ-ALEXの結果が示され、今年のASCOでALEXの結果により追認され、我が国で見出された疾患に対して、我が国発の治療薬がcurrent best optionであることが示された。
そんなわけで、肺癌屋は胸をときめかせながら本セミナーのようにALK肺癌を語る。
しかし、実臨床ではあまりにもALK肺癌に遭遇する機会が少なすぎて、芸能界・スポーツ界の話題を聞いているかのようだ。
2017/07/09
Best of ASCO 2017、ランチョンセミナー
<ALK陽性肺がんの未来−よりよい治療を目指して−>
・ALK肺癌の研究開発
Ann Oncol supple.3 2016
米国ではBrigatinibも承認された
日本ではCrizotinib, Alectinib, Ceritinibが承認されている
CeritinibはCrizotinib耐性例のみが対象で、コンパニオン診断は規定されていない
・ALK肺癌にはPEMも効く
thymidilate synthase
Shaw et al., N Engl J Med 2385-2394, 2013
・ALK肺癌はp63の免疫染色でよく染まる→扁平上皮癌と間違えられることもある
・AlectinibはRET陽性肺癌にもよく効く
・J-ALEX study
Crizotinib群に脳転移陽性例が多かった
Takiguchi et al., ASCO 2017 Abst.#9064
updated data: mPFS 25.9M vs 10.8M, HR 0.38
・ALEX study
well balanced, brain metaは両群ともに30-40%
・Ceritinib
Alectinib PD後でも国内phase Iでは4例中2例に奏効(Nishio et al., 2017)
悪心、嘔吐、下痢は必発、80%に休薬、60%に減量を要す
ASCEND-4 study, Soria et al., Lancet 2017
・Brigatinib
Kim et al., J Clin Oncol 2017, in press
phase II ALTA study, 90mg vs 180mgの比較試験
この試験を持ってFDAは承認した
・Lorlatinib
Johnson et al., J Med Chem 4720-4744, 2014
G1202Rにも効果あり、中枢神経移行がよい
Felip et al., WCLC 2016
brain metaの患者が全体の72%を占めていても有効
前治療歴>2 regimenでも有効
Solomon et al., ASCO 2016 abst.#9009
Ou et al., ASCO 2017 abst.#9006
Sanjay, Ou et al., ASCO 2017
脂質異常、浮腫、可逆性の中枢神経障害(会話障害、注意力障害)
・脳転移陽性割合
ALK-TKI naiveで31-40%, ALK-TKI administeredで60-71%
・ALEX study brain meta. specific PFS: HR 0.16
・Shaw CCR 2015, 2745-2752: Crizotinib→CeritinibのOS
・Lin et al., Cancer Discov 2017
acquired resistance mechanism of ALK-TKI
・Ou et al., ASCO 2017 abst.#9010 and #9065
Brigatinib投与中のctDNA assay
・Crizotinib, Alectinib/Ceritinib, Lorlatinibのrotation therapy