今年も例年の如く、Best of ASCOが開催された。
Best of ASCOは有明の東京ビッグサイトで開催されることが多い。
豪雨災害の渦中にある大分県から上京してみると、都内は嘘のような日差しで、なんだか拍子抜けしてしまった。
一部の学会・セミナーの2日目の時間割は、朝がとても早い。
私が毎年参加するものの中で、最も朝が早いのは、呼吸器内視鏡学会総会の2日目に行われるモーニングセミナーだ。
7時台から始まる。
朝食が食べられないので、近年は参加していない。
その次位にくるのが、臨床腫瘍学会総会や、Best of ASCOだろうか。
今回は、朝の8時からスポンサードセミナーが開催された。
久しぶりにスポンサードセミナーに参加してみると、演者によってバイアスのかかり方がかなり異なる。
プロレス観戦みたいなもので、聴衆もそれを踏まえて参加しなければならない。
本セミナーも、肺癌診療ガイドラインの方向性とうたってはいるが、ざっと見れば分かるようにほとんどの話題は免疫チェックポイント阻害薬にまつわるものだった。
特定のメーカーの製品に偏った話ではなかったものの、このテーマでこの内容でいいのか、という印象は拭えなかった。
2017/07/09
Best of ASCO 2017, モーニングセミナー
<肺癌診療ガイドラインの方向性>
・診断と治療の進展がめまぐるしく、毎年のように標準治療が塗り替えられる
・ガイドライン2016の主な変更点
非小細胞肺がんの初回治療に免疫チェックポイント阻害薬が登場した
・昨今の議論
免疫チェックポイント阻害薬をどのように評価するか
稀少がんのエビデンスをどのように取り扱うか
長期生存者の増加・後治療を踏まえた戦略
・免疫チェックポイント阻害薬による長期生存者
Brahmer et al., AACR 2017
Nivolumab phase I study:2年間だけNivolumabを投与
生存期間中央値は9.9ヶ月
3年生存割合18%
5年生存割合16%
・非扁平上皮癌に対するNivolumab療法後の早期病勢進行患者の取り扱い
Borghaei et al., N Engl J Med 2015
・KEYNOTE-024 study
Reck et al., N Engl J Med 2016
PD-L1発現率50%以上なら、一次治療でもPembrolizumabが優れる
OSのハザード比は0.61(95%信頼区間は0.41-0.89)、p=0.005
クロスオーバーされていながらもOSが延長した
Brahmer et al., ASCO 2017 Abst. #9000
PFS2について解析
ハザード比は0.54(0.40-0.72)、p<0.001
生存期間中央値は18.3ヶ月 vs 8.4ヶ月
・PD-L1>50%はどの程度のpopulationなのか
KEYNOTE-001: 23.2%
KEYNOTE-010: 28.5%
KEYNOTE-024: 30.2%
・Nivolumab最適使用推進ガイドライン
PD-L1<1%の非扁平上皮癌では、二次治療でも化学療法優先
・PD-L1>50%のとき、以下の患者群をどのように取り扱うか
PS 2以上
高齢者
ドライバー遺伝子異常陽性
・ドライバー遺伝子異常陽性者と免疫チェックポイント阻害薬
Lee et al., J Thorac Oncol 2016
Leighl et al., ASCO 2017
KEYNOTE trialにおける
EGFRm:mOSは6.0ヶ月、3y-OSは6.7%
EGFR wild type:mOSは12.0ヶ月、3y-OSは21.1%
WCLC 2015: PD-L1>50%でもEGFR遺伝子変異陽性だと効果は低い
・KEYNOTE-021 study
Langer et al., Lancet Oncol 2016
ランダム化第II相試験
CBDCA+PEM+Pembrolizumab→Pembrolizumab up to 2years, mPEM(-)
CBDCA+PEM→mPEM
PFSは併用療法群で優れていたが、OSは有意差がなかった
FDAは本試験を以ってCBDCA+PEM+Pembrolizumab療法を承認した
・irAE
irAE発症者の多くはresponder
Weber et al., J Clin Oncol 2016
irAEなし / ありでの奏効割合は17.8% vs 48.6%
・自己免疫性疾患を持つ患者におけるirAE(FDA調査):94/552(17%)
自己免疫疾患が悪化した患者:78/837(9.3%)
・JAMA oncologyで自己免疫疾患を有する患者30人での解析結果公表
・日本人におけるNivolumabの市販後調査、ILDの解析
Kenmotsu et al., ASCO 2017
ILD発症までの中央値:40日
ILD発症のリスクファクター
・再投与患者の解析
Santini et al., ASCO 2017
MSKCCにおけるICI投与対象者の15%がirAEを発症した
うち54%はICI再投与を受けた
24%は同じirAEを経験した
26%は当初とは異なるirAEを発症した
50%はirAEを発症しなかった
PFSは再投与をしてもしなくても変わらなかった
・稀少癌のエビデンスをどう扱うか
対象患者が少なすぎて比較試験が成り立たない
RETに対するvandetanib
ROS1に対するcrizotinib
・2017年6月27日の毎日新聞の記事
次世代シーケンサーの臨床導入、できれば2018年中に・・・厚生労働省
・進行非小細胞肺癌診療のこれから
次世代シーケンサー解析と免疫染色でのPD-L1発現解析
ドライバー遺伝子異常陽性なら分子標的薬へ
PD-L1やmutational burden陽性なら免疫チェックポイント阻害薬へ
いずれも陰性なら化学療法へ
・後治療も踏まえた治療戦略
ALEX studyではcrizotinib群からalectinib群へのクロスオーバーが多そう
一方で、alectinib群からcrizotinib群へのクロスオーバーは少なさそう