免疫チェックポイント阻害薬と肺合併症

第57回日本呼吸器学会総会 2017年4月21日

シンポジウム2

免疫チェックポイント阻害薬と肺合併症

<免疫チェックポイント阻害薬の作用機序と治療戦略>

・免疫療法の開発は、非特異的免疫療法から特異的免疫療法へ

・生態にとって有害となる免疫応答を抑制するのが、本来の「免疫チェックポイント」の役割

・腫瘍細胞に発現している免疫チェックポイント関連タンパク

 CD86、CD80、PD-L1、PD-L2

・抗原提示細胞やT細胞に発現している免疫チェックポイント関連タンパク

 CTLA-4、PD-L1、PD-1、CD80

・priming phaseは抗原提示細胞とT細胞のクロストーク、effector phaseはT細胞と腫瘍細胞のクロストーク

・Chen et al., Nature 321-330, 2017

 免疫チェックポイント阻害薬併用療法の臨床試験一覧

・Cancer Immunity cycle

・T細胞上のPD-1は腫瘍細胞上のPD-L1、PD-L2の双方と結合する

・腫瘍細胞上のPD-L1はT細胞上のPD-1とCD80の双方と結合する

・実験上、抗PD-L1抗体だけでは腫瘍制御効果は限定的だが、抗PD-L1抗体と抗PD-L2抗体を併用したところ、腫瘍発育が良好に制御された

<免疫チェックポイント阻害薬の臨床成績>

・全がん協HPで発表された2002年から2007年に診断された肺癌患者の5年生存割合

 腺癌では、III期:25.5%、IV期:6.7%

 扁平上皮癌では、III期:19.6%、IV期:2.9%

・2nd / 3rd lineの免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験

 CheckMate 017試験:Nivolumab for 扁平上皮癌

 CheckMate 057試験:Nivolumab for 非扁平・非小細胞癌

 KEYNOTE-010試験:Pembrolizumab

 OAK試験:Atezolizumab

・Lee et al., J Thorac Oncol 403-407, 2017

 EGFR遺伝子変異陽性患者の治療成績はいまひとつ

・1st lineにおける免疫チェックポイント阻害薬

 KEYNOTE-024試験:Pembrolizumab for PD-L1>50%→生命予後延長

 CheckMate-026試験:Nivolumab for PD-L1>5%→有意差なし

・現在進行中の1st lineにおける免疫チェックポイント阻害薬臨床試験

 KEYNOTE-042:Pembrolizumab

 Impower 110:Atezolizumab

 Impower 111:Atezolizumab

etc.

・Nivolumab phase I, Brahmer et al., AACR 2017

 1年生存割合:42%

 2年生存割合:24%

 3年生存割合:18%

 5年生存割合:16%

・Tumor Mutation Burden(TMB)と免疫チェックポイント阻害薬

 AACR 2017, CheckMate-026試験におけるTMBと臨床効果

 TMBを0-100, 1000-242, 242以上の群に区分

 high TMB & PD-L1>50%の患者群では予後良好

 high TMB & PD-L1<50%の患者群>low TMB & PD-L1>50%の患者群

 low TMBだとPD-L1の発現状態に関わらず予後不良

ニボルマブ市販後調査における肺障害に関する中間報告>

・www.BioLegend.com, cell signalingとimmunologic network

・EGFR-TKIとILD

 Genma et al., Cancer Sci 2014, ErlotinibとILD

 Kudoh et al., AJRCCP 2008, GefitinibとILD

・各薬剤で発生するILDの特徴

 EGFR-TKI:

  acute onset, AIP / DAD pattern

  genetic factor(+)

 mTOR inhibitor:

  gradually onset, various ILD pattern

  hypoimmune status

 ICIs:肺への自己免疫疾患惹起

  early to intermediate onset

  hyper immune status

  drug "mediated" ILD

・Kato et al., Lung Cancer, 111-118, 2017

 Japanese Phase II Nivolumab studyとILD

・Jp J Clin Oncol 270-272, 2016

 Nivolumab induced Organizing Pneumonia in melanoma patient

・PD-1抗体によるILDは使用例全体の5%強に発生する

 1-1.5mg/kgとやや多めのPSLで治療にあたる

・Nivolumab全例調査継続中、1年後には最終的な結果発表予定

・ILDは解析対象3635人中、300人程度に起こるだろうと見積もっている

・2016年11月までで10606人の非小細胞肺がん患者がNivolumabを使用

・2017年4月までで約15000人が非小細胞肺がん患者がNivolumabを使用

・Nivolumab使用後、ILDを発症するための危険因子は

 75歳以上、治療開始前のCTでILDの所見あり、2次治療

・NivolumabによるILD発症後、死亡するための危険因子は

 男性、治療開始前のCRPが5以上、発症時の画像パターンがAIP like

・ILD発症のための危険因子と発症後に死亡するための危険因子が異なる

・関連内容の海外発表予定

 ATS 2017 #6825

 ASCO 2017 #9077, #9078

<免疫チェックポイント阻害薬による肺障害の画像的特徴>

悪性黒色腫、非小細胞肺がん両方で、2016年11月までにILDが報告された195人をスクリーニング

 160人をILDと認定

 発症前のCT所見と比較可能だった155人を解析

・従来の抗がん薬、分子標的薬でも認められるようなパターンを従来型と分類

 101人が分類され、22人が死亡

・従来は見られなかった、以下のような特徴を持つものを非従来型と分類

 54人が分類され、7人が死亡

 1 腫瘍周囲にすりガラス陰影が出現する=peritumoral infiltration(PTI)

  24人が分類され、2人が死亡

 2 既存の放射線性線維化病巣の周囲に陰影が出現する

  8人が分類され、2人が死亡

 3 患側(の腫瘍病巣周辺)優位に陰影が出現する

  4人が分類され、1人が死亡した

 4 既存肺感染症の増悪

  βDグルカンが上昇していたことからニューモシスチス肺炎の増悪と判断された悪性黒色腫の患者→PCRや鏡検で確認されたわけではない

  緑膿菌感染の増悪と判断された患者

  4人が分類され、2人が死亡した

・画像パターンからの分類(155人)