・白血球分画と免疫チェックポイント阻害薬

 当院でもPD-L1検索をポツリポツリ行っていますが、今のところ最高値は50%陽性です。

 陽性所見は小さな生検組織標本の中でもかなりばらつきがあり、どうやって数値化してるんだろうと首を傾げてしまいました。

 多分実際の診断に当たっている病理医の先生方も試行錯誤しているのでしょう。

 上記の50%陽性の方は、外科生検標本であったにも拘らず、

 「標本の品質不良」

 「参考値」

とわざわざ付記されている上に、結果がペンブロリズマブの一次療法におけるカットオフ値であったためか、2人の病理医によるダブルチェックが成されていました。

 しかし、こういった形でも結果を出していただけると、臨床医としては背中を押してもらっているようで、ありがたいです。

 この患者さんは胸部放射線療法後のために、あと5ヶ月(治癒不能の非小細胞肺がん患者にとっての治療待機期間としては、途方もなく長く感じられる)はペンブロリズマブが使えないのですが、少なくとも治療選択肢がひとつ増えたのは喜ばしいことです。

 

 閑話休題

 PD-L1よりもTumor Mutation Burdenがより効果的な効果予測因子になりそうだ、という報告が先日ありました。

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e897136.html

 

 今回は、患者さんの末梢血液中のナチュラルキラー細胞やPD-1+ / CD8+ リンパ球の多寡がニボルマブの治療効果予測因子になるというものです。

 腫瘍側ではなく、患者さん側の要素が治療効果予測因子になりうるというわけで、腫瘍細胞や腫瘍浸潤リンパ球といった組織生検をしないと評価できないものではなく、血液検査で事足りるというのが、患者さんにとっても担当医にとっても喜ばしいことです。

 普通の血液検査で評価できるようなものではなく、フローサイトメトリーのような特殊な検査機器が必要になるのでしょうし、治療経過中にこれら細胞が増加するかどうかは治療してみないと分からないのですが、たとえば治療中止の目安にはなるかもしれません。

 治療効果を予測することも大切だが、不要な治療の継続を避けることも立派な研究成果になるでしょう。

 

 

 

 

https://cslide.ctimeetingtech.com/library/esmo/browse/itinerary/5566/2017-05-06#2DYJ09N

 

ELCC 2017: White Blood Cell Count May Predict Response to Lung Cancer Immunotherapy

 

By The ASCO Post

Posted: 5/8/2017 12:05:07 PM

Last Updated: 5/8/2017 12:05:07 PM

 

 免疫療法の効果を白血球数で予測できるかもしれない。そんな報告が、ELCC2016, abst.# 30PDで行われた。

 

 NivolumabやPembrolizumabのような免疫チェックポイント阻害薬は非小細胞肺がん患者の生命予後を有意に改善する、が、全ての患者にその恩恵があるわけではない。医療資源の浪費や不要な毒性に患者を晒すことを避けるために、効果予測因子が日々探索されている。生検組織におけるPD-L1発現は患者選択に利用されているが、完璧に効果を予測できるものではない。おそらく、PD-L1発現が、免疫反応の立ち上がりを反映したものではないからだ。血中の効果予測因子であれば、より簡便に検査でき、より鋭敏に免疫反応を反映するかもしれない。

 

 今回の研究では、Nivolumab療法に反応した患者を白血球数で予測できるかどうかを検討した。Nivolumab 3mg/kgで14日ごとに治療した非小細胞肺がん患者54人を対象とした。白血球数は治療開始前、Nivolumab療法2コース後、および4コース後の時点で測定した。Nivolumab療法で効果が合った患者と効果がなかった患者の白血球数を比較した。

 治療開始前および治療中の白血球数により、Nivolumab療法の効果を予測できることが明らかになった。治療開始前のナチュラルキラー細胞が多いほど、あるいは高濃度であるほど、さらには治療中にナチュラルキラー細胞が増加しているほど、Nivolumabの効果が見られた。また、Nivolumabで効果がある患者では、PD-1陽性のCD8陽性T細胞の数が多く、高濃度であることも分かった。