ALK陽性肺がんにALK阻害薬が効かなくなったらどうするか

 ALK陽性肺がんの患者さんからご相談があった。

 診断がついてからALK阻害薬を順次使用して、現在は治験中のLorlatinibを使っているとのこと。

 ただし、治療効果が鈍りつつある様子。

 

 ALK陽性肺がんは、治療が効かなくなった際の耐性化機序が多彩だ。

 そして、その耐性化機序によって、次に使うべき薬がかわってくる。

 残念ながら、各患者の耐性化機序を明らかにして、つぎの治療に生かす、というところまで、実地診療は追いついていない。

 そんな中、今ならどんなことが出来るのか、考えてみた。

1)耐性化機序を明らかにするために再生検をして、ALK融合遺伝子検査をやり直す

 保険適応外のPCR検査やLC-SCRUM、OncoPrime、大学などの研究機関を利用しないと、ALK融合遺伝子の種類までは判明しない

 以下のリンクに示した研究機関なら、実費で(場合によっては再生検でなく、リキッドバイオプシーでも)調べてくれるかもしれない

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e884316.html

2)耐性化機序がわかったら、それに見合った薬を使う

 もし1)を経て耐性化機序が判明したら、それに見合った薬に切り替えることで、効果が期待できるかもしれない

 Lorlatinibはかなり広範な耐性化機序をカバーするとされているが、Lorlatinib耐性化後のcrizotinibが効いた、という症例報告があり、実際に国内でも同じような現象が確認されているらしい

 crizotinib, alectinib, ceritinib, brigatinib, lorlatinibの交代療法なんて概念が、まことしやかにささやかれているそうだ。

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e833200.html

 http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e904105.html

3)耐性化機序がわからなかったら、一度はpemetrexedを含む化学療法を試してみる

 ALK陽性肺がんには、pemetrexedが高い効果を示すことが知られている

 ALK阻害薬が効きにくくなったとしても、一度はトライしてみたい

 その後に分子標的薬に再トライする、という考え方もありだろう

 ALK陽性肺がんはなんといっても患者数が少ないため、EGFR陽性肺がん、PD-L1陽性肺がんに比べると実地臨床が変わっていくスピードが緩やかだろうと予測される。

 ベストの診療にめぐり合いたいと考えるなら、ときには保険適応外の検査を受けた上で次の診療を模索することも選択肢だろう。