lorlatinib phase I / II study

 ALK阻害薬の第I世代をcrizotinib、第II世代をalectinib、ceritinibとすると、第III世代のlorlatinibの開発が進んでいるようだ。

 ALK阻害薬は、中枢神経移行の良さが問われることが多いのだが、lorlatinibはその点が優れているよう。

 一方で、会話障害や注意力障害といった、認知症を思わせるような珍しい有害事象も報告されている。

 以下の報告には記載されていないが、実地臨床に導入された場合には、それなりに問題視されるだろう。

Efficacy and safety of lorlatinib in patients (pts) with ALK+ non-small cell lung cancer (NSCLC) with one or more prior ALK tyrosine kinase inhibitor (TKI): A phase I/II study.

AT Shaw et l., ASCO 2017 abst.#9006

背景:lorlatinibは選択的で、中枢神経移行の良い、次世代のALK / ROS1チロシンキナーゼ阻害薬である。既知の殆どの耐性遺伝子変異に対して有効とされる。第I相試験、および今回報告する第II相試験では、既治療で中枢神経病変を有するALK / ROS1陽性進行非小細胞肺がん患者が多数を占める中で、lorlatnibは確固たる臨床効果を示した。第II相部分において、安全性と有効性を検証した。

方法:現在も進行中である第II相試験では、中枢神経病変に関連した症状の有無を問わず、また中枢神経病変に対する未治療・既治療を問わず、ALK陽性 / ROS1陽性非小細胞費肺がん患者を対象として、6つの拡大コホートに組み入れた(コホート1−5はALK陽性患者、コホート6はROS1陽性患者)。患者はlorlatinibを100mg/日、1日1回内服した。主要評価項目は奏効割合(ORR)と中枢神経関連奏効割合(IC-ORR)とした。

結果:今回の効果判定対象は、ALK陽性の既治療患者に限定した。データカットオフを2016年8月15日に行った。82人のALK陽性患者をコホート2−5に割り付けた。2016年3月31日までに治療を開始した患者を効果判定対象とした。52人がIC-ORRの評価対象となり、うち35人は標的病変(5mm以上の病変で、放射線治療歴がないか、放射線治療後に増大したもの)のみで奏効を判定した。次表に要約する。

コホート2:前治療はcrizotinibのみ

コホート3:前治療はcrizotinib+化学療法、もしくはcrizotinib以外のALK阻害薬1剤±化学療法

コホート4:前治療はALK阻害薬2剤±化学療法

コホート5:前治療はALK阻害薬3剤±化学療法

 116人のALK陽性 / ROS1陽性進行非小細胞肺がん患者が安全性評価対象となった。以下、(全グレード、グレード3 /4)として有害事象を記載する。最も頻度の高かった有害事象は高コレステロール血症(90%, 17%)と高中性脂肪血症(72%, 17%)だった。治療中断もしくは減量につながる有害事象はそれぞれ29%, 20%報告された。14%の患者は、重篤な有害事象を経験した。5人(4%)は有害事象により治療中断に至ったが、治療関連死はなかった。データカットオフ時点で、116人中74人(64%)はlorlatinibを継続していた。