太っているとアテゾリズマブが効きやすい?

 どうも、不摂生な人ほど免疫チェックポイント阻害薬は効きやすいらしい。

 喫煙者に免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいのはよく知られている。

 今回は、太りすぎの人にもアテゾリズマブがよく効きます、という話。

 問題は、そうと分かっていても、治療をする際にはあまり役立たないということ。

 「あなたは痩せすぎだから、アテゾリズマブは使えません」

なんて言えるわけがない。

 痩せているとアテゾリズマブを使ったら生存期間が短縮する、くらいのインパクトがあれば、使わないという選択肢もあるかもしれない。

 しかし、そうではないようだ。

 

 治療を提供する立場としては、不摂生な人ほどよく効く、という治療は、あまりうれしくない。

Pooled Analysis of Body Mass Index and Overall Survival With Immune Checkpoint Inhibitor Therapy in NSCLC

Ganessan Kichenadasse et al.

JAMA Oncol. Published online December 26, 2019. doi:10.1001/jamaoncol.2019.5241

背景:

 免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けた悪性黒色腫の患者においては、Body Mass Index(BMI)が高い患者は長期生存する傾向にある。進行非小細胞肺がんの患者に対してアテゾリズマブを使用した際、BMIと治療効果に相関が認められるかどうかはまだ明らかになっていない。

方法:

 非小細胞肺がん患者をアテゾリズマブで治療するにあたり、BMIと生命予後、有害事象の相関について検証する。

試験デザイン:

 4つの国際的な多施設共同臨床試験において、個別の患者情報を入手してpooled analysisを行った。4つのうち2つは単アーム第II相試験(BIRCH試験とFIR試験)で、2つは2アームの無作為化比較試験(第II相POPLAR試験と第III相OAK試験)だった。患者は進行非小細胞肺がんの患者で、治療歴がないか、少なくとも1レジメンの薬物療法を受けていた。測定可能病巣を有し、臓器機能が保たれていて、化学療法や免疫チェックポイント阻害薬の適用を満たす患者だった。2019年2月28日から2019年9月30日の期間に本解析を行った。

介入:

 POPLAR試験もしくはOAK試験においては、対照群は病勢進行もしくは忍容不能の有害事象に至るまでドセタキセルを3週間ごとに投与した。試験治療群は、病勢進行もしくは忍容不能の有害事象に至るまでアテゾリズマブを3週間ごとに投与した。BMIは体重(kg)を身長(m)で2回除した数値である。正常体重群をBMI 18.5-24.9、体重過多群をBMI 25.0-29.9、肥満患者群をBMI>30と定義した。

主たる評価項目:

 BMIと全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、治療関連有害事象(AE)の相関関係を検証する。Intention-to-treat分析を行った。

結果:

 4つの臨床試験の2,261人分の総データの中で、解析に利用可能なデータは2,110人分だった。この2,210人の中で、1,434人(年齢中央値は64歳(57-70歳)、890人(62%)は男性)はアテゾリズマブを使用し、676人(年齢中央値は63歳(57-69歳)、419人(62%))はドセタキセルを使用した。アテゾリズマブを使用した患者では、BMI増加とOSの延長に線形の相関関係が認められた(p<0.001)。正常体重群と比較して、OSにおける肥満患者群のハザード比は0.64(95%信頼区間は0.51-0.81)で、同様に体重過多群のハザード比は0.81(95%信頼区間は0.68-0.95)だった。PD-L1陽性患者群の解析でも、正常体重群と比較して、OSにおける肥満患者群のハザード比は0.48(95%信頼区間は0.34-0.66)で、同様に体重過多群のハザード比は0.73(95%信頼区間は0.58-0.91)だった。

BMIとOS/PFSの相関関係は、PD-L1高発現の患者群でもっとも顕著だった。PD-L1高発現群(436人:がん細胞の50%以上、もしくはがん病巣内に浸潤している免疫細胞の10%以上が発現している)でOSの解析をしたところ、肥満患者群ではハザード比は0.36(95%信頼区間は0.21-0.62)、体重過多群ではハザード比は0.69(95%信頼区間は0.48-0.98)だった。同様に、PFSの解析をしたところ、肥満患者群ではハザード比は0.68(95%信頼区間は0.49-0.94)、体重過多群ではハザード比は0.72(95%信頼区間は0.56-0.92)だった。

ドセタキセルを使用した患者群では、正常体重群と比較して肥満患者群(ハザード比0.92、95%信頼区間は0.70-1.21)、体重過多群(ハザード比0.96、95%信頼区間0.78-1.18)に有意なOS延長効果は認められなかった。

有害事象とBMIの間に相関関係は認めなかった。

結論:

 BMIは、アテゾリズマブで治療した非小細胞肺がん患者における独立した予後因子で、今後の免疫チェックポイント阻害薬関連の臨床試験において、割付調整因子としてBMIを考慮すべき可能性がでてきた。