肺がん気管支鏡検査にどこまでCoVID-19用の配慮が必要か

 2020年03月03日には、ついに大分県でもCoVID-19感染患者1人目の発生が報告された。

 ダイヤモンドプリンセス号から下船した方が発症するだろうと予想していたため、全く無関係の人が発症したことに少なからず驚いた。

 サービス業に従事している方らしいので、業務中に感染したのではないだろうか。

 同じ空間を共有していた方には今後も発症のリスクがあり、感染拡大は予断を許さない状況だ。

 子供が通う学校では、とうとう卒業式が中止されてしまった。

 学校の先生方からすれば、本当に断腸の思いでの決断だろう。

 卒業生とご父兄、先生方、在校生、みなさんに心から同情する。

 2020年03月02日付で、末尾に示すような通知が日本呼吸器内視鏡学会から送付されてきた(ごく一部改変)。

 これを受けて、大学病院に勤務する医師から、以下のような連絡がきた。

 「気管支鏡検査の喉麻酔の際、呼吸器内視鏡学会の指針に従い、ジャクソンスプレーを使わないようになりました」

 「気管支鏡検査の際も、N95マスクを使用したほうがよいとのことですが、マスクが足りなくなりそうなので、普通のマスクで行うこととしています」

 CoVID-19確定、および疑い患者でなければ、そこまでする必要はないように思うのだけれど・・・。

 肺がん疑いの患者の気管支鏡ですら、この対応が必要なのだろうか。

 このように、プロですら過剰に反応せざるを得ないところが、CoVID-19の厄介なところなのだろう。

 ちなみに、私が以下の手法で気管支鏡をするならば、多分通常よりは多めに3.の薬を使用する。

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◆COVID-19及び疑い症例に対する気管支鏡検査における注意喚起 第2報

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 先般,会員の皆様には2019-nCoVの感染,肺炎(疑い症例を含む)に対する気管支鏡検査に対して,安易な検査を控えること,感染防止の為の防御策を徹底することについてお願いしたところであります.現時点においては日本国内でも感染が拡大しつつあり,これまでのように指定医療機関だけでは対応が困難となり一般の医療機関においてもCOVID-19症例あるいは疑い症例の診療を行わざるを得ない状況になることが予想されます.皆様ご存知のようにコロナウィルスは飛沫感染接触感染を基本にしており,2019-nCoVにおいても飛沫感染接触感染が主な感染経路であるとされていますが,医療現場で気管挿管などの専門的な医療処置を行う場合など,特定の特殊な条件下ではエアロゾルによる感染の可能性が指摘されています.特に気管支鏡検査室のような密閉された空間で,高濃度の汚染されたエアロゾルにある程度の時間さらされた場合には,エアロゾルによる2019-nCoVの伝播は起こりうると考えられるため,COVID-19症例あるいは疑い症例でやむを得ず気管支鏡検査が必要である場合には,局所麻酔についても可及的にエアロゾルを発生させないような配慮が必須となります.気管支鏡テキスト(第3版)にはジャクソンスプレーによる咽頭喉頭・気管麻酔が記載されておりますが,その際に生じる咳嗽により多くのエアロゾルが発生する危険性があります.そこで,呼吸器内視鏡学会では実際に気管支鏡検査を行う場合の麻酔方法について具体的に提示するとともに,会員の皆様に改めて注意を喚起することといたしました.

1.対面式のジャクソンスプレーを用いた局所麻酔は行わない

2.8%キシロカインスプレーを用いて口腔咽頭麻酔をおこなう

3.鎮静剤(ベンゾジアゼピンオピオイドなど)の全身投与を行う

4.ある程度の鎮静が得られた時点で気管支鏡を挿入し,声帯が見えた位置で気管支鏡の鉗子孔より1%キシロカインをゆっくりと注入・散布し,喉頭から気管の麻酔を行う

 ここに記載した麻酔方法は一例ですが,ジャクソンスプレーによる咽頭喉頭・気管麻酔を行った場合と同等の検査が可能と考えられます.

 なお,各施設の事情,気管支鏡検査受診者の状況に応じて,適宜変更が必要であることは当然考えられますので,あくまでも参考例としての取り扱いをお願いいたします.