脳転移を有する進行非小細胞肺がんに対する治療

 2019年の日本肺癌学会で、こんな発表があった。

 有意差こそついていないものの、脳転移に対する放射線治療をきちんとした方が、患者さんの生存期間は長くなりそうだ。

 一部内容を抜粋すると、調査対象となった187人に患者において、

1)脳転移に対する放射線治療を先行させ、のちに薬物療法を行った患者106人の生存期間中央値は524日(343−669日)

2)脳転移に対する放射線治療のみを行った患者24人の生存期間中央値は674日(132日−未到達)

3)薬物療法を先行させ、のちに脳転移に対する放射線治療を行った患者23人の生存期間中央値は629日(228日−740日)

4)薬物療法のみを行った患者25人の生存期間中央値は469日(222日−未到達)

だったとのこと。

 進行期の非小細胞肺がん患者で、脳転移のみ治療を行うという3)の集団はかなり特殊なケースで、ちょっと違和感を感じる。

 高齢であるとか、PS不良であるとか、何らかの理由で薬物療法ができなかったケースではないだろうか。

 今回の報告は、以前の記事内容とも符合する。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e906132.html

 EGFR遺伝子変異のある患者で、ときおり脳転移の治療よりも薬物療法が優先され、結局最後まで脳転移巣に対する放射線治療が行われなかった、というのは時々見かける。

 実際のところEGFR阻害薬は脳転移にも有効で、過去には放射線治療よりも薬物療法を優先させた方がいいとの報告もあるが、要はどっちもやるべきなんだと思う。