PD-L1発現を見るための検査

 既に非小細胞肺癌で承認されたニボルマブは年間3000−4000万円、近い将来承認されるであろうペンブロリズマブは年間1億円の薬価がかかります。

 このうち90%以上は国民全体が税金や借金として負担します。

 それだけに、治療効果予測因子を開発し、不要な使用を避けるのが喫緊の課題といわれています。

 いまのところはっきりしているのは、腫瘍細胞もしくは腫瘍に浸潤する炎症細胞のPD-L1発現状態が予測因子として一定の有用性がありそう、ということです。

 しかしながら、そのPD-L1発現状態を見るための方法はさまざまあり、今のところ標準化されていません。

 そのために、ニボルマブが使用可能になった現在も、PD-L1発現をみる検査を一般臨床で利用することは出来ません。

 おそらく、ペンブロリズマブの承認時にはコンパニオン診断(Dako 22C3 assay)が利用可能になるでしょう。

 また、標準化を待たず、各治療薬ごとにコンパニオン診断薬が異なる、という状況になるでしょう。

 既にEGFRやALKの治療では、コンパニオン診断の取り扱いが問題になっています。

 個人的には、科学的に妥当ならばどの検査でもよくて、ほぼ商業的な問題だろうと思っています。

 今年のAACRでなされた報告では、異なるPD-L1検査間の一致率が検証され、どの検査でもよさそう、という結論に至ったようです。

 ただ、それぞれの検査でどこにカットオフ値を設定したら結果が一致する、ということは示されていますが、治療効果予測を行う上でどこにカットオフ値を設定するか、というのはまた別問題です。

AACR 2016: Comparison of Three Different PD-L1 NSCLC Diagnostic Tests Shows a High Degree of Concordance

Abst.# LB-094, Ratcliffe et al, AACR Annural Meeting 2016

 現在市販されている3種のPD-L1関連検査の検出精度はどれも同様であることが報告された。

 Ratcliffe女史は、

 「PD-1抗体、PD-L1抗体は単独療法でも併用療法でも、さまざまな癌種で効果があることが確認されつつある」

と語り、どの患者がPD-L1を高発現していて、PD-1抗体やPD-L1抗体の効果が期待できるのか、いくつかの異なる検査で効果的に調べることができると説明している。

 「これまでは、いくつかあるPD-L1関連検査が同じようにPD-L1発現を検出できるのかはっきりしていなかった。それぞれの検査が異なる背景で、異なる抗体を用いて、異なる手順で開発されてきた。このことは、治療効果が期待できる患者選別の信頼性を損なうなど、実地臨床におけるさまざまな問題に結びつく」

 今回は、durvalumabの開発段階でVentana社とAstraZeneca社が共同開発したVentana SP263抗体、Pembrolizumabの開発段階でDako社がコンパニオン診断として開発し米国食品医薬品局の承認を受けたDako 22C3抗体、そしてNivolumabの開発段階でDako社が開発したDako 28-8抗体について検討した。

 これら3種ともに、各抗体でPD-L1蛋白を認識して、腫瘍細胞の細胞膜を染色し、その陽性割合を評価する。それぞれの検査種ごとにカットオフ値を設定し、検査結果がカットオフ値を超えた場合、その患者は治療反応性が期待できると判定される。

 非小細胞肺癌患者から採取された約500の生検検体が評価された。

 Ventana SP263でカットオフ値を25%としたものと、Dako 28-8でカットオフ値を10%としたものが同等だった。また、Ventana SP263とDako 22C3でそれぞれカットオフ値を50%とした場合も、高精度で結果が一致していた。いずれも、90%以上の一致率だった。