DurvalumabとGefitinibの併用療法(ELCC2016)

 DurvalumabとGefitinibの併用療法に関する初期の報告がELCC2016で成されたようです。

 わずか20人の治療経過に関する報告ですが、奏効割合は80%程度、病勢コントロール割合はほぼ100%と有望です。

 これからさらに患者数を増やして検証作業がされるようです。

 そのほかにもさまざまな組み合わせで免疫チェックポイント阻害薬+チロシンキナーゼ阻害薬の臨床試験が進行していますが、どちらかというと免疫チェックポイント阻害薬の効果が低いとされるdriver oncogene addicted NSCLCに対するこうした治療コンセプトの妥当性は、今回の報告を見る限り確たる背景が乏しいようで、今後どのように展開していくのか未知数です。

・Durvalumab+Gefitinib併用療法の第I相試験について、ELCC2016の"Best Abstracts"セッションにおいて初期の結果報告がなされた

・Durvalumabは人型IgG1モノクローナル抗体で、PD-L1とPD-1もしくはPD-L1とCD-80の相互作用を阻害する

・GefitinibはEGFR阻害薬

・対象はEGFR遺伝子変異陽性の、EGFR阻害薬治療歴のない非小細胞肺癌患者

・忍容性と抗腫瘍活性について、有望な結果だった

・今回報告されたのは、Durvalumab+Gefitinib併用療法の第I相オープンラベル多施設共同臨床試験の、容量設定段階試験のupdated dataだった

・Exon 19 deletion変異の患者が11人、Exon 21 L858R変異の患者が8人参加した

・患者は2つの治療群に割り付けられた

・1群では、Durvalumab 10mg/kgを2週間に1回、Gefitinib 250mg/日を毎日使用した

・2群では、Gefitinib 250mg/日を毎日、4週間使用し、引き続いて1群と同様の治療を行った

・患者背景は2群間で同様だった

・主要評価項目は安全性、副次評価項目は奏効割合、薬物動態、免疫源性とされた

・ほとんどの患者で、安全性は良好だった

・最も頻度の高かった有害事象は下痢で、1群で80%、2群で60%に認められた

・1群では70%にALT上昇、60%に発疹を認めた

・2群では60%にALT上昇、同じく60%に掻痒症を認めた

・無症候性のAST/ALT上昇は両群で認められたが、2群のほうがより高頻度で高度だった

・ALT/AST増加に対しては、使用量の減量もしくはステロイド投与で対応した

・Grade 3/4の有害事象によって治療継続不能になった患者は2群にのみ認められ、3人はALTもしくはASTの増加が、1人は肺臓炎が原因だった

・19人(1群のうち9人、2群のうち10人)で、治療開始から8週以降の効果判定ができた

・奏効割合は1群で77.8%(9人中7人が奏効)、2群で80%(10人中8人が奏効)だった

・1群のうち1人は完全奏効だった

・8週以上病勢安定を保っている患者は1群で2人、2群で1人認められた

・24週以上病勢安定を保っている患者は2群で1人認められた

・抗PD-1 / PD-L1抗体療法は非小細胞肺癌の二次治療で確立され、奏効割合は20%以上である

・治療効果は長期間持続し、これにより目覚しい長期生存が得られる

・化学療法と比較して、治療関連有害事象の頻度は低く、全Gradeで50-69%、Grade 3 / 4で8-16%であり、そのうちGrade 3 /4の免疫関連有害事象は約5%とされる

・治療中止が必要となる有害事象も同様に5%程度である

・PD-L1の免疫染色結果が抗PD-1 / PD-L1抗体単剤療法の効果予測に有効と目されている

・免疫チェックポイント阻害薬とチロシンキナーゼ阻害薬の併用は野心的な治療であり、有効性を示唆する基礎データは乏しい

・EGFR遺伝子変異陽性の早期非小細胞肺癌では、PD-L1発現は増強しているようである

・しかしながら、進行したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌では、抗PD-1 / PD-L1抗体療法の効果はむしろ低い

・にも拘らず、免疫療法とチロシンキナーゼ阻害薬併用療法の臨床試験は多数進行中である

−EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するDurvalumab+Gefitinib併用療法

−EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するDurvalumab+Osimertinib併用療法

−EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌で、Erlotinib治療後に病勢進行に至った際のNivolumab+Erlotinib併用療法

−ALK再構成陽性非小細胞肺癌で、Crizotinib治療後に病勢進行に至った際のNivolumab+Ceritinib併用療法

−EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するAtezorizumab+Erlotinib併用療法

−ALK再構成陽性非小細胞肺癌で、Crizotinib治療後に病勢進行に至った際のAtezorizumab+Alectinib併用療法

−EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌で、Erlotinib治療後に病勢進行に至った際のPembrolizumab+Rociletinib併用療法

−EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌で、Pembrolizumab治療後に病勢進行に至った際のPembrolizumab+Afatinib併用療法

−ALK再構成陽性非小細胞肺癌に対するPembrolizumab+Crizotinib併用療法

−KRAS変異陽性非小細胞肺癌に対するPembrolizumab+Dabrafenib / Trametinib併用療法

・今回の結果を受けて、Durvalumab 10mg/kgの隔週投与とGefitinib 250mg/日の連日投与を併用する設定で更なる開発を進めることになった

・治療開始前後の生検組織や血液検体を用いたバイオマーカーの探索が進行中で、EGFR阻害薬と免疫療法併用時の効果発現メカニズムが今後明らかになっていく予定である

reference

57O. Efficacy, safety and tolerability of MEDI4736 (durvalumab [D]), a human IgG1 anti-programmed cell death-ligand-1 (PD-L1) antibody, combined with gefitinib (G): A phase I expansion in TKI-naïve patients (pts) with EGFR mutant NSCLC