私ががんセンターにいた2006年-2008年当時は、抗がん薬の調整は医師が行っていました。
毎朝病棟を回診して、その日に治療を受ける患者さんの抗がん薬を調整するのが日課でした。
最近では、薬剤部で薬剤師が調整するのが一般的になっています。
当初は薬剤師の業務過多で二進も三進もいかなくなるのではと心配されましたが、どの病院でもどうにかうまく行っているようです。
しかし、薬剤師が抗がん薬に接する頻度はここ数年で飛躍的に増しているはずで、抗がん薬の医療従事者への暴露が最近よく話題になります。
当院では今のところ、医師が抗がん薬を調整しています。
しかし、先日のリスク管理委員会で、外来の薬剤調整スペースで抗がん薬を調整するのは問題では?という議論になりました。
次の写真を見ていただくと、
「なるほど、確かに問題かもね。」
という気分になるかもしれません。
一方は抗がん薬のアブラキサン、一方はリプルという血管拡張薬でしばしば整形外科で使われる一般薬ですが、見分けがつきますか?
どちらも白濁した溶液で、区別がつきません。
左がアブラキサン、右がリプルです。
ラベルが張ってあれば分かりますが、同じ台の上で同時に調整していると間違ってしまう可能性もあります。
と言うわけで、薬剤部にスペースを作っていただき、そこで調整をするようにしました。
治療を受けている患者さんは非常に快調で、体重が4kg増えて、痛みや咳で悩まされることもなくなったということで、今日から麻薬や去痰薬の使用を中止しました。
相変わらず、抗がん薬による毒性は、骨髄抑制や末梢神経障害を含めてほとんど出ていません。
これで脱毛がなければ、女性にも自信を持ってお勧めできる治療なのですが・・・。
太田胃散・・・もとい、アブラキサン、ありがとう、いいくすりです。