経気管支肺生検1例目

 当院に異動して6ヶ月目を迎えますが、今日ようやく1例目の経気管支肺生検にこぎつけました。

 左肺尖部腫瘤、転移性脳腫瘍、全脳照射後の状態で紹介された方です。

 治療後の脳浮腫で一過性に失語、右上肢片麻痺に陥っておられましたが、ステロイドの増量で少し改善しました。

 PSは3程度ですが、分子標的薬の適応があればまだ生命予後の改善が期待できる、というわけで、本日気管支鏡をしました。

 院内のvirtual bronchoscopyでは左B1+2bからアプローチすれば確実にhitする、という読みだったのですが、実際には陰影をすり抜けていき、左B1+2aiβでhitしました。

 あとは、細胞診の結果を確認しだい、凍結保存中の検体を遺伝子変異検索に供します。

 先日参加した九州の肺がん臨床試験グループ「LOGiK」の会合では、PS 3-4の患者さんのみを対象にした分子標的薬の臨床試験が議題となっていました。

 これまでの治療開発の原則からすれば、PS3-4の患者、すなわち、抗がん薬治療をするとかえって予後を短くしてしまう、といった方々を対象とするのは、ある意味ご法度でした。

 しかし、分子標的薬の登場、とりわけNEJグループによるPS不良、EGFR遺伝子変異陽性の患者さんに対するgefitinibの臨床試験の成功は、小規模な試験ながら我々実地臨床家に与えたインパクトは大きく、PS不良の患者さんでも(遺伝子変異の)確定診断のための検査は行わなければならない、といった空気が少しずつ漂い始めているように思います。

 大学病院で過ごした5年間の間にも、gefitinibの恩恵を受けたEGFR遺伝子変異陽性、PS2-4の患者さんが何人もいました。

 今回の患者さんも、治療により社会生活が出来る程度にならなかったら、体が不自由なご主人も今後の生き方を見直さねばならなくなるので、責任重大です。

 分子標的薬が効く可能性は、喫煙歴があることから決して高くはありませんが、あきらめずに検査結果を待ちたいと思います。

 明日は、施設入所中で、右肺腫瘤、頭蓋骨転移のPS4の患者さんに対して、確定診断目的に頭蓋骨穿刺細胞診を外来で行う予定です。

 近日中に気管支鏡を購入する目処がつきましたし、少しずつ自分らしさが出せる環境が整ってきました。