感受性EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌の一次治療において、
「若くて元気なExon 19のEGFR遺伝子変異陽性患者さんにはafatinib」
という考え方が、ずいぶん浸透してきている気がする。
LUX-Lung 3 and 6の統合解析のインパクトは、やはり大きかった。
統合解析という手法自体に対して賛否の意見はあるかもしれないが、言ってみればIPASS試験においてEGFR遺伝子変異の有無が大きなインパクトを残したように、LUX-Lung 3 and 6においても、EGFR遺伝子変異ごとの解析というのは、ある意味もっとも大きな知見だったのではないか。
一方で、未治療の患者をgefitinibとafatinibに無作為割付したLUX-Lung 7試験は、中途半端なランダム化第II相試験で、何度考えてもいまいちだ。
臨床試験のコンセプトがぼやけていて、得られた結論も無理やり解釈するしかない。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e833076.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e875727.html
そのほかに、EGFR阻害薬同士を直接比較した臨床試験として、WJOG5108Lが想起されるが、こちらは既治療患者に対する臨床試験で、erlotinibに対するgefitinibの非劣勢を証明するためのものだったが、統計学的には何も示せず、奥歯に何か挟まったような結果になった。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/d2014-07-09.html
早い話が、EGFR阻害薬同士の直接比較試験というのは、これまでぱっとしたものがない。
そんな中、ASCO 2017では「遅れてきた第II世代」、Dacomitinibに関する報告があった。
きちんとした第III相試験で、少なくとも主要評価項目の無増悪生存期間では、圧倒的な差を持ってgefitinibを凌駕した。
約70%の患者がアジア人であり、我が国の実地臨床に反映される可能性が高い。
進行非小細胞肺癌における分子標的薬の地平を開いたgefitinibだが、今後はPS不良例や高齢者に活躍の場が限定されそうな雰囲気だ。
Dacomitinibでも、Afatinibのように遺伝子変異様式別で効果に差が出るのだろうか。
現時点でははっきりしていないが、層別化因子としてEGFR遺伝子変異様式が含まれている以上、いずれサブグループ解析の結果も明らかにされるだろう。
Dacomitinibの問題は、Afatinibに勝るとも劣らない毒性と、今回の試験で除外基準とされた脳転移を有する患者に対する位置づけだろう。
Dacomitinib versus gefitinib for the first-line treatment of advanced EGFR mutation positive non-small cell lung cancer (ARCHER 1050): A randomized, open-label phase III trial.
Mok et al.
ASCO 2017, abst. #LBA9007
・未治療のEGFR遺伝子変異陽性(Exon 19もしくはExon 21, T790Mを並存するかどうかは問わない)進行非小細胞肺がん患者を対象とした
・脳転移を有する患者は除外した
・Dacomitinib群とGefitinib群に1:1で無作為に割り付けた
・層別化因子は人種とEGFR遺伝子変異様式とした
・主要評価項目は無増悪生存期間とした
・Dacomitinib群に227人、Gefitinib群に225人が割り付けられた
・無増悪生存期間はDacomitinib群で14.7ヶ月(95%信頼区間は11.1-16.6ヶ月)、Gefitinib群で9.2ヶ月(95%信頼区間は9.1-11.0ヶ月)、ハザード比0.59(95%信頼区間は0.47-0.74)、p<0.0001
・奏効割合はDacomitinib群で75%(95%信頼区間は69-80%)、Gefitinib群で72%(95%信頼区間は65-77%)、p=0.39
・全生存期間は未解析