・J-ALEX試験とALEX試験

 J-ALEXとALEX。

 ASCO 2016と2017で相次いで発表されたこれら2試験の結果から、ALK融合遺伝子陽性肺がん初回治療としてのアレクチニブの位置づけは定まったといっていいでしょう。

 とりあえず、無増悪生存期間についてはアレクチニブ群に軍配があがっているようだ、ということはわかるのですが、じゃあアレクチニブ群での無増悪生存期間や全生存期間はどのくらいなのかというと、まだまだわかりません。

 そもそも、第I相試験であるAF-001JP試験ですら、無増悪生存期間の中央値が判明していないです。

 

 

 

Alectinib versus Crizotinib in patients with ALK-positive non-small-cell lung cancer (J-ALEX): an open-label, randomized phase 3 trial

 

Hida, Nokihara, et al.

Lancet 2017

 

・ALK阻害薬治療歴のない(化学療法歴は1レジメンまでOK)ALK融合遺伝子陽性の日本人進行非小細胞肺癌患者を対象とした

・アレクチニブ群は300mg/回を1日2回、クリゾチニブ群は250mg/回を1日2回服用した

・主要評価項目は無増悪生存期間とした

・207人の患者が登録され、アレクチニブ群に103人、クリゾチニブ群に104人が割り付けられた

プロトコール治療終了後のクロスオーバーは許容されていた

・まず、クリゾチニブ群に対するアレクチニブ群の非劣勢を証明し、その後にアレクチニブ群の優越性を検証するというデザインだった

・当初は2回の中間解析を予定していたが、プロトコール改訂により3回に増やした

・2回目の中間解析の段階でアレクチニブ群の優越性が示された

・患者背景は両治療群間でほぼバランスが取れていたが、アレクチニブ群(14%)に比べてクリゾチニブ群(28%)では脳転移を有する患者が多かった

・無増悪生存期間中央値は、アレクチニブ群で未到達(95%信頼区間は20.3ヶ月以上)、クリゾチニブ群で10.2ヶ月(95%信頼区間は8.2から12.0ヶ月)で、ハザード比は0.34(95%信頼区間は0.17-0.71)、p<0.0001

・治療歴のない患者での無増悪生存期間は、アレクチニブ群で未到達(95%信頼区間は17.5ヶ月以上)、クリゾチニブ群で10.2ヶ月(95%信頼区間は8.3-13.9ヶ月)で、ハザード比は0.31(95%信頼区間は0.17-0.57)

・化学療法歴のある患者での無増悪生存期間は、アレクチニブ群で20.3ヶ月(95%信頼区間は20.3ヶ月以上)、クリゾチニブ群で8.2ヶ月(95%信頼区間は6.4-15.7ヶ月)、ハザード比は0.40(95%信頼区間は0.19-0.87)

・両群ともに、ほとんどの患者で治療開始後1ヶ月以内に腫瘍縮小が認められた

・奏効割合は、アレクチニブ群で85%(95%信頼区間は78.6-92.3%)、クリゾチニブ群で70%(61.4-79.0%)

・論文発表時点で、全生存期間はまだ評価できる段階にない(ほとんどの人が生存している)

 

 

 

Alectinib versus Crizotinib in untreated ALK-positive non-small-cell lung cancer

 

Peters, Camidge, Shaw, et al.

N Engl J Med 2017

 

・過去に治療歴のないALK融合遺伝子陽性進行非小細胞肺癌患者を対象とした

・アレクチニブ群は600mg/回を1日2回、クリゾチニブ群は250mg/回を1日2回服用した

・主要評価項目は無増悪生存期間とした

・303人の患者が登録され、アレクチニブ群に152人、クリゾチニブ群に151人が割り付けられた

プロトコール治療中のクロスオーバーは許容されていなかったが、クリゾチニブ群で病勢が進行した後にアレクチニブを使用するのは可とされていた

・患者背景は両治療群間でほぼバランスが取れていた

・無増悪生存期間中央値は、アレクチニブ群で未到達(95%信頼区間は17.7ヶ月以上)、クリゾチニブ群で11.1ヶ月(95%信頼区間は9.1から13.1ヶ月), ハザード比は0.47(95%信頼区間は0.34-0.65), p<0.001