2014年のASCOの話題がまとまってきましたので、備忘録代わりに記載します。
まずは、REVEL試験について。
ASCO2014の直後に、Lancet誌に論文発表されています。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24933332
本試験の主役であるramucirumab(私は、この名前を初めて聞いたときに、沖縄県の小浜島にある「はいむるぶし」というリゾートホテルを思い出しました)は、血管増殖因子受容体(VEGFR)-2の細胞外ドメインに対して高い親和性で結合する完全ヒト型IgG-1抗体です。胃癌の領域では、二次治療において単剤、もしくはPaclitaxelとの併用にて全生存期間を有意に延長することが第III相試験で示されています。今回は、Docetaxelとramcirumabの併用療法がDocetaxel単剤より全生存期間を延長するかどうかが主たる目的でした。
対象は治癒不能の非小細胞肺癌で、一次治療不応となった患者さんで、扁平上皮癌、非扁平上皮癌いずれも含んでいます。
扁平上皮癌が除外されるbevacizumabとは異なる適格条件です。
併用療法群ではDocetaxelを75mg/㎡+ramcirumabを10mg/kg、3週間ごとに投与します。
単剤療法ではDocetaxel75mg/㎡+プラセボを3週間ごとに投与します。
いずれも、明らかな病勢進行が確認されるまで、延々と継続します。
主たる評価項目は全生存期間です。
628人が併用療法群に、625人が単剤療法群に割り付けられました。
生存期間中央値は併用療法群で10.5ヶ月、単剤療法群で9.1ヶ月であり、p=0.023と有意差がつきました。
無増悪生存期間中央値は併用療法群で4.5ヶ月、単剤療法群で3.0ヶ月、p<0.0001とこちらも有意差がつきました。
さらに、奏効割合は併用療法群で23%、単剤療法群で14%、p<0.0001とやはり有意差がつきました。
治療効果に関わる指標はいずれも併用療法群が有意に優っており、明らかにpositive studyです。
これで、肺癌領域で第III相試験で全生存期間を延長することが確認された抗体医薬は
1)非小細胞/非扁平上皮癌の一次治療におけるbevacizumab
2)EGFRの発現が組織学的に確認されている非小細胞肺癌の一次治療におけるcetuximab
3)非小細胞肺癌の二次治療におけるramcirumab
4)扁平上皮癌の一次治療におけるnecitumumab
と、広がりを見せつつあります。
特に、扁平上皮癌の一次治療、二次治療に抗体医薬が関与できるようになったことは、大きな進歩だと思います。
ただし、ramcirumabがそのまま国内でも使われるようになるかどうかは、未知数です。
確かに第III相臨床試験で有意差がつきましたが、試験の規模、生存曲線、p値など、どれをとってもcetuximabの第III相FLEX試験を彷彿とさせます。
大規模臨床試験でわずかな差を証明したのはいいものの、市場の冷徹な目に晒されて、臨床応用までには至らない、という可能性は捨て切れません。
cetuximabは未だに国内での追試が行われていませんし、肺癌領域では臨床導入もされていません。
今後の動静を見極めたいと思います。