肺癌の診療に用いられる分類にはいろいろなものがあります。
その中で代表的なものとして、TNM分類が挙がります。
一般には、「ステージ分類」「病期分類」と記した方がイメージしやすいでしょう。
T:腫瘍原発巣の部位と位置、N:所属リンパ節腫大の範囲、M:遠隔転移の三要素によって、癌の広がりを表現しようというものです。
ありとあらゆる悪性腫瘍で設定されていますが、卵巣腫瘍などのように一部例外もあります。
また、TNM分類が世界的に認知されているにもかかわらず、日本国内では独自の病期分類が用いられている腫瘍もあります。
そんな中、日本肺癌学会はほぼTNM分類に準拠して肺癌取り扱い規約を作成しています。
2017年1月1日より、このTNM分類が現行の第7版から第8版に改訂される予定です。
今回の学会では、特別企画として改訂メンバーの先生が可能な範囲で解説してくださいました。
概ね、以下のようなことを発言されていました。
・TNM分類の作成にはいろんな組織が関わっている。
・UICC-TNM分類とAJCC-TNM分類がよく知られていて、それぞれ別の出版物を作っているが、基本的に内容は同じものである。
・前回改訂は2010年だった。
・UICCはスイスに本部を置く世界的な組織だが、組織自体はこじんまりとしていて、臨床データはあまり持っていない
・AJCCはアメリカに本拠を置く組織で、TNM分類の決定権は持たないものの、各臓器別にタスク・フォースを抱えている。
・AJCCはタスクフォース内でTNM分類の素案を作成し、それをもとにUICCと協議する。
・AJCCのタスクフォースでは、IASLCから肺癌患者のデータ供与を受け、それを解析してTNM分類素案の根拠とする
・IASLCはデータベースも出すが、お金も拠出する
・日本肺癌学会は、IASLCに対してデータベースを拠出するとともに、staging comittee memberも送り込んでいる
・IASLCが今回提出したデータベースには94708人の患者データが含まれるが、その内訳は北米:4660件、アジア:41705件、欧州:46560件、豪州:1593件となっており、アジアと欧州からのデータ拠出が多い。
・これでは、世界中の患者データが満遍なく組み込まれているとはいいがたく、特定地域のデータに偏っていると言わざるを得ない。
・日本肺癌学会は毎年UICCに100万円を拠出している。
・UICCとAJCCには、TNM分類に対する基本的な考え方の違いがある。
・UICCは解剖学的な病巣の分布に基づいてステージ分類を行おうとする。
・AJCCは生命予後に準じてステージ分類を行おうとする。
・N因子については我が国のデータと海外データにかなりの食い違いがあり、正直言って他国のリンパ節郭清がどのくらいしっかりされているのか、疑問である。
・米国では、N1とN2の間に予後の違いが出ない
・欧州においては、なぜかN0症例の予後が他の国より悪い
・次回改訂から、T因子は腫瘍長径1cmから5cmまで1cm刻み、5cmから7cmまではひとくくり、7cm以上はT3と扱われる。
・遠隔転移の取り扱いに関しては、M1aが現行通り、M1bは単一臓器への単発転移、M1cは単一臓器多発 / 多臓器多発と定義される予定。