EGFR阻害薬の歴史と新たな展開と6つの教訓

日本肺癌学会ワークショップ2016

・gefitnibは2002年7月5日に本邦で製造承認された

・EGFR阻害薬臨床導入後の年表供覧、とにかくいろんなことがあった

・IDEAL1 & 2 study(gefitinib)、どちらもrandomised phase II

Fukuoka et al, 2003

Kris et al, 2003

 サブグループ解析で、日本人の方が効果よさそう、組織型は腺癌がよさそう、性別は女性がよさそう

・INTACT 1 & 2(gefitinib)

Johnson et al, 2002

Giaconne et al, 2002

・TRIBUTE(erlotinib)

・TALENT(erlotinib)

・BR.21(erlotinib): Shepherd et al, ASCO 2004, N Engl J Med 2005

・ISEL(gefitinib):Thatcher et al, Lancet 2005

<教訓1> 

 全ての患者は同一でなく、患者選択が必要

・間質性肺障害

・2002年10月15日 毎日新聞記事

・2011年11月16日、朝日新聞記事

・大阪と東京で訴訟となったが、最高裁で無罪確定(平成24年 第293号事案、平成25年4月12日結審、第三小法廷にて)

<教訓2>

 全ての薬は潜在的には毒である

・IDEAL 1 & 2参加患者の組織標本を用い、免疫染色でEGFR発現状態を解析

Bailey et al, 2003

Janas et al, 2003

・2004年4月29日、WJTOG国際シンポジウムが奈良公会堂で開催されたときの、Belani先生のつぶやき

 「ボストンのグループがEGFR遺伝子変異とgefitinibの効果について、Science誌とN Engl J Med誌で発表するらしいよ」

Lynch et al, N Engl J Med 2004

Paez et al, Science 2004

Pao et al, PNAS 2004

・当時は愛知県立がんセンターに所属していたが、週明けから直ちに自施設での解析に着手した

・確かに遺伝子変異陽性患者はいた

Kosaka et al, Cancer Res, 8919-8923, 2004

・gefitinibは、臨床試験群を概観すると、sEGFRm(+)患者に対する奏効割合は72%程度、(-)患者に対しては10%程度

<教訓3>

 がんゲノムががんの表現型を決めており、薬物療法を行う際の強力な効果予測因子となる

・Cappuzo et al: EGFR増幅が効果予測に有望と主張

・Tsao et al, N Engl J Med, 133-144, 2005:FISHが効果予測に有望と主張

・IPASS studyにおけるサブグループ解析の結果:sEGFRm(+)か(-)かで、gefitinib群では予後が大きく分かれる

Mok et al, N Engl J Med 2009

・IPASS studyにおけるFISH解析: FISHでは予後が分かれず

Fukuoka et al, ASCO 2009

<教訓4>

 生物学的裏づけのない仮説はたいてい虚言である

・NEJ 002とWJTOG 3405の仁義なき戦い

・NEJ 002が中間解析で有効中止、先んじてASCOで結果発表

・ASCOの報告を目の当たりにしたWJTOGグループは統計家と協議し、statistical amendmentを行って、ESMOで結果発表

→個人的には、この流れにはちょっと眉をひそめてしまいます

・大急ぎで論文にして、NEJ 002に先んじてLancet Oncol誌に掲載されるところまでこぎつけた

<教訓5>

 計画通りには決して進まない

 ありがたいのはグループの力

 ここ一番の根性と体力も必要

・二次耐性変異の問題

・Exon 20, T790Mに対するOsimertinibの開発

2013年3月6日 first in human study開始

2015年11月13日 米国で製造承認

2016年3月28日 日本で製造承認

2016年5月25日 日本で薬価基準収載

<教訓6>

 攻め続けず一息つけば、あっという間に追いつかれる