日本肺癌学会ワークショップ2016
・2004年の講演でEGFR遺伝子変異とgefitinibの関係を伺ってからというもの、末梢血のctDNA, ctRNAを用いたliquid biopsyの取り組みをずっと続けてきた
・MBP-QP法を用いたT790Mモニタリング
QPはquenching probeの略
probeはwild type DNA, mutated DNA両方に会合するが、加温したときに解離する温度が異なる(mutated DNAの方が高温で解離)
解離するときの温度でwild typeとmutationを見分ける(mutationがあれば二峰性になる)
200μLの血漿からDNAを抽出
抽出DNAは4μL程度
MBP-QP法で解析
・liquid biopsy各手法の比較
・HASAT study
Sueoka-Aragane et al, Cancer Sci 2015
liquid biopsyによるT790M検出を多施設共同で前向きに検証
適格基準:sEGFRm陽性のNSCLC
主要評価項目:PD時に血漿DNAからT790Mが検出されるかどうか
副次評価項目:PD時のDNA解析結果が血漿と組織で一致するかどうか
→ただし、実際に組織が集まったのは全参加者89人中わずか8人
探索的検討:T790M状態とEGFR-TKI阻害薬の効果が符合するか
登録患者数は89人、血漿DNA解析患者数は87人、血漿DNAと腫瘍組織両方解析した患者数は8人
病勢進行時に解析した患者は58人、そのうちT790M陽性だったのは23人
病勢進行の前に解析した患者は29人、そのうちT790M陽性だった患者は7人
コントロール不良な状態になるほど、T790M陽性割合が上がる
男性、喫煙者、sEGFRmがEx.19 del.の人だとT790Mが出やすい
liquid biopsyで陽性となるかどうかは、遠隔転移の有無を反映する
・liquid biopsyの取り組みから得られたこと
1)ctDNAで遺伝子変異検索可能だった患者は、それ自体予後不良
2)組織変異検索結果とctDNAの検索結果の一致率は50%
3)ctDNAは臨床経過とともに出現したり消退したりする
・腫瘍細胞が耐性変異を獲得するに至るさまざまな経路
Hata et al, Nature Med 2016
・erlotinibとliquid biopsy
J Thorac Oncol, 1437-1443, 2015
・腫瘍組織を用いたcobas法での変異検索と、血漿DNAを用いたBEAMing法での変異検索の一致率について
Oxnard et al, J Clin Oncol 2016
・世間の動きは、liquid biopsyで陰性だったときに、再生検で結果を確認する、という方向になりつつある
・今後の課題
最適なliquid biopsyの検査手法とカットオフ値の決定
liquid、組織の両方で院生の時には、他の異常を検索へ
・東広島医療センターの先生からの質問
東広島医療センターでは、ドライバー遺伝子変異が陽性だった患者さんは、全例病理解剖をするように目指している
少なくとも半数は、転移先によってheterogeneityが見られる
こうした現実を踏まえると、単一の耐性遺伝子変異が見つかったからといって、その治療だけをしておけばいいとは思えない