私は、ファミコン世代です。
もともとゲームウォッチが好きで、「オクトパス」やら「ドンキーコング」やら、当時としては高価なおもちゃを買ってもらって遊んでいました。
そんな中で、ファミコンがさながら流星の如く社会に飛び出しました。
友人の家のテレビの中で躍動するマリオやポパイは、ゲームウォッチの世界のタコやゴリラとは、明らかに違うオーラを放っていました。
残念ながら両親の方針で我が家にファミコンがやってくることはありませんでした。
その後、ディスクシステム、スーパーファミコン、ニンテンドー64、Wii、WiiUなどを世に送り出した任天堂ですが、最近ではスマホゲームに押されて、業績が悪化していると聞きます。
任天堂、アルファベットでNintendo・・・。
今日扱う分子標的薬は、もともとBIBF1120と呼ばれていましたが、最近ではNintedanibと称するそうです。
あんまり似ているので、つい任天堂の話題から始めてしまいました。
BIBF1120の名前を最初に知ったのは、特発性肺線維症に対する治療薬として開発の俎上にのった分子標的薬がある、という噂を耳にしてからでした。
特発性肺線維症は難治性の肺変性疾患で、今のところ大規模臨床試験で有効性が証明されたのは、pirfenidoneくらいです。
それでも、治療効果は「特発性肺線維症の進行を遅らせ、経年的な肺活量の低下を緩やかにする」という程度です。
簡単に言えば、悪くなる速度を遅くする、ということで、病態を改善する治療ではありません。
BIBF1120については、同様の治療効果を見るためのTOMORROW試験(第II相試験)が終了しています。
http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa1103690
BIBF1120を150mg/回、1日2回、12ヶ月服用した人はそうでなかった人に比べて、1年後の努力肺活量の低下が有意に少なかった(0.06L vs 0.19L)そうです。
現在のところIMPULSIS I/IIという大規模第III相臨床試験が進んでいるそうです。
一方、BIBF1120は、肺癌の世界でも有効性が示されています。
http://www.thelancet.com/journals/lanonc/article/PIIS1470-2045(13)70586-2/fulltext
初回化学療法終了後、しばらく時間がたって、2nd lineの治療に悩むときどうするかがこの論文の主旨のひとつです。
通常はドセタキセルかペメトレキセドで悩むところでしょうが、今回はそこにBIBF1120を上乗せしてしまおう、という試みです。
結果として、腺癌に限って言うならば、無増悪生存期間も全生存期間も延長しました。
化学療法との併用で使われた分子標的薬が、曲がりなりにも全生存期間を延長したのは、あまり記憶にありません。
わずかな差かもしれませんが、BIBF1120は、IPFにも肺癌にも、IPF合併肺癌に対しても、面白い薬です。
EGFR-TKIの治療薬/肺癌の化学療法薬として、これまでにない話題を提供してくれそうです。