高齢非小細胞・非扁平上皮癌の化学療法

 わが国の肺癌患者さんの約半数は75歳以上と考えられています。

 そのため、わが国の肺癌臨床では、75歳以上を高齢者と定義しています。

 手術であれ薬物療法であれ、治療法の選択をするに当たっては高齢者か否かは重要な因子です、

 高齢者肺癌の薬物療法では、概ね以下のような治療選択がされることが多いのではないでしょうか。

 非小細胞・非扁平上皮癌:

  遺伝子変異があれば分子標的薬

  遺伝子変異がなければペメトレキセド単剤もしくはカルボプラチン+ペメトレキセド併用もしくはドセタキセル単剤

 扁平上皮癌:

  ドセタキセル単剤

 小細胞癌:

  カルボプラチン+エトポシド併用もしくは分割シスプラチン+エトポシド併用

 腺癌の化学療法で単剤治療がいいのか、併用療法がいいのかは臨床試験によっても担当医師によっても意見が分かれるところかと思いますが、今回の韓国からの第III相試験結果は単剤治療を支持する結果であり、わが国のJCOG / WJOGが示した結果(シスプラチン+ドセタキセル併用療法はドセタキセル単剤療法を凌駕しない)に符合します。

 ただし、今回の臨床試験では、わが国の定義とは異なり「70歳以上」を高齢者と定義しています。

 70歳のPS 0-1といえば、わが国の実地臨床の感覚としては高齢者とは程遠いです。

 また、併用療法により無増悪生存期間で1.2ヶ月、全生存期間で3.2ヶ月の生存延長効果が確認されており、いかに統計学的に有意差がないとはいえ、新たに検証する必要があると感じます。

 以下、要約です。

Open-label, multicenter, randomized phase III trial of pemetrexed/carboplatin doublet vs pemetrexed singlet in chemotherapy-naïve elderly patients aged 70 or more with advanced non-squamous non-small cell lung cancer and good performance status.

2016 ASCO Annual Meeting

Poster Session, Lung Cancer?Non-Small Cell Metastatic

Abstract Number: #9081

背景:

 70歳以上の高齢、PS 0-1、進行非扁平上皮・非小細胞肺癌患者を対象に、一次治療としてカルボプラチン+ペメトレキセド(PC)併用療法とペメトレキセド(P)単剤療法を比較する臨床試験を計画した。

方法:

 オープンラベル多施設共同第III相臨床試験として計画した。70歳以上、進行非扁平・非小細胞肺癌、PS 0-1、前治療歴なし、腫瘍臓器機能が保たれていて、測定可能病変がある患者を対象に、PC群(ペメトレキセド500mg/?、カルボプラチンAUC5)とP群(ペメトレキセド500mg/?)に割り付けた。割付調整因子は治療施設、性別、Charson Comorbidity Index(CCI)とした。治療は3週ごとに、病勢進行、継続不能な毒性発現、患者の治療中止希望のいずれかに至るまで継続した。PC群のカルボプラチンは、4コースを上限とした(つまり、PC群においては、4コースのPC併用療法後に治療継続可能であればP単剤の維持療法に移行した)。主要評価項目は無増悪生存期間とし、副次評価項目は全生存期間、奏効割合、安全性とした。

結果:

 2012年3月から2015年10月にかけて、6施設から267人の患者が登録された。年齢中央値は74歳(範囲は70歳-86歳)、95%がPS1、65%が男性、63%がCCI1以上だった。無増悪生存期間中央値は、PC群で5.5ヶ月、P群で4.3ヶ月で、ハザード比は0.85(95%信頼区間は0.64-1.12、p=0.246)だった。生存期間中央値はPC群で12.5ヶ月、P群で9.3ヶ月、ハザード比は1.03(95%信頼区間は0.70-.152、p=0.865)だった。治療期間中に13人(4.9%)の治療関連死を認めた。

結論:

 ペメトレキセド単剤療法にカルボプラチンを上乗せしても、今回の治療対象に対しては寄与しないことが明らかになった。