進展型小細胞肺癌とbevacizumab

 小細胞癌領域におけるベバシツマブの治療開発は頓挫したと思っていましたが、今回の米国臨床腫瘍学会総会で進展型小細胞癌に対するベバシツマブ上乗せ効果を検証する第III相試験の結果が発表されるそうです。

 残念ながら有意な全生存期間の延長は示されなかったようですが、ハザード比は0.7台前半と、まずまずの結果を残しています。

 もう少し患者集積を行えば、有意差に至っていたかもしれません。

 今後はラムシルマブなんか、どうでしょうね。

 abstractを抜粋します。

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Italian multicenter phase III randomized study of cisplatin-etoposide with or without bevacizumab as first-line treatment in extensive stage small cell lung cancer (SCLC): GOIRC-AIFA FARM6PMFJM trial.

2016 ASCO Annual Meeting

Poster Discussion Session, Lung Cancer?Non-Small Cell Local-Regional/Small Cell/Other Thoracic Cancers

Abstract Number: #8513

背景:

 小細胞癌組織では血管新生が活発に行われており、患者の生命予後に関わる因子である。第II相臨床試験における有望な結果を踏まえ、進展型小細胞肺癌に対する初回化学療法として、シスプラチン+エトポシド併用療法にベバシツマブを上乗せする意義を検証する無作為化第III相臨床試験を計画した。

方法:

 A群(シスプラチン25mg/?およびエトポシド100mg/?をday1,2,3に点滴)とB群(A群の治療に加え、ベバシツマブ7.5mg/kgをday1に点滴)に患者を振り分け、投与間隔は3週ごと、最大6コースで治療を行った。6コース終了後に病勢進行がなければ、B群では病勢進行に至るか、上限の18コースに至るまでベバシツマブ維持投与を行った。主要評価項目は全生存期間とした。

結果:

 2009年11月から2015年10月までに、204人の患者が各治療群に割り付けられた(A群103人、B群101人)。198人がintention-to-treat解析に供された(A群102人、B群96人、両群合わせて6人は割り付けられた治療を受けなかった)。A群、B群それぞれで、男性は68% vs 70%、PS 0-1は89% vs 93%だった。年齢中央値は64歳(41歳-81歳)だった。 血液学的毒性については、2群間に統計学的有意差はなかった。日血液毒性については、高血圧のみB群で有意に高頻度だった(Grade 3-4が1% vs 6%, p=0.033)。Grade 3-4の蛋白尿や出血性合併症は認めなかった。追跡期間中央値は35ヶ月、A群およびB群における無増悪生存期間中央値は5.7ヶ月 vs 6.7ヶ月(ハザード比0.72, 95%信頼区間は0.54-0.97, p=0.030)、全生存期間中央値は8.9ヶ月vs9.8ヶ月、1年生存割合は25% vs 37%(ハザード比0.78、95%信頼区間は0.58-1.06、p=0.113)だった。

結論:

 シスプラチン+エトポシド併用療法にベバシツマブを上乗せすることにより無増悪生存期間は改善し、毒性は忍容可能だった。しかし全生存期間の有意な改善は得られなかった。小細胞癌に対する血管新生阻害治療コンセプトは、更なる検討が必要である。