クライオプローブ、発売まで秒読み段階

 先日長崎市で開催された日本呼吸器内視鏡学会総会で、3年ぶりにクライオプローブが企業展示ブースに並べられていた。  いよいよこの8月に発売となるらしい。  一式の想定価格は800万円程度とのこと。  大きな組織が取れる、きれいな病理所見が得られる、など、病理診断・免疫染色、遺伝子診断の面ではメリットが多い。  一方、クライオプローブを使ったからといって、通常生検と全く異なる検査所見が得られるわけではないので、追加の診療報酬は出ないだろう。  この点は、ラジアル型EBUSプローブと同じで、診断精度は上がるものの、それにかかるコストは患者ではなく病院が負担することになる。  したがって、クライオプローブも、ごく限られた医療機関にしか普及しない可能性が高い。  だからこそ大学病院などでは積極的に採用すべきだろう。  国立がん研究センター東病院では、クライオプローブ生検の安全性を検証する臨床試験が現在も続けられている。  登録予定症例数は200人、これまでのところ67人まで終了したとのこと。  少なくとも数字の上では合併症のリスクは同等で、より良質な大きな検体が取れる一方で、生検個数が少ない、手技に熟練を要する、最終的に評価可能な標本を作製できる割合がやや落ちるといった問題も出てきている様子。  そして、今回の学会発表において、座長からは、  「診断技術に関わるこうした検討で、主要評価項目が”安全性”というのはあまり類を見ない」  「よく倫理審査委員会が許可したものだ」  「万が一、主要評価項目の安全性が担保できなかったなら、クライオプローブ自体の商品化・市販の道が閉ざされかねない」  「安全性が担保できたとして、従来の鉗子生検に比べて、患者にはどのようなメリットがあるのか」 といった、「座長の質問としてはあまり類を見ない」厳しい内容の質問が矢継ぎ早に飛んでいた。  私の主観から言わせてもらえれば、採取される検体の質という点では、鉗子生検とクライオプローブ生検では比較にならない。  比較対象となるならば、外科生検とクライオプローブ生検だろう。  全身麻酔下外科生検とクライオプローブ生検、どちらが患者の満足度が高いかを検証する比較試験をするとよい。    さりとて、現行の肺癌診療では、通常生検で必要十分な結果が得られることが多いのも事実である。  実際に、当院のような普通の私立病院でも、通常生検でLC-SCRUM用の検体採取に事足りている。  クライオプローブは綺麗な・豊富な検体が採取できるという点ではいい検査だが、鉗子生検と比較してどんなメリットが患者にあるのかという命題に答えるのはなかなか難しい。  間質性肺炎の外科生検の代替手段としては、かなり有望だと思われるのだが。