PD-L1評価と、LC-SCRUM-IBIS

 「検体不足」と題して、PD-L1発現状態の評価がうまく出来なかったことに触れたが、上司からコメントを頂いた。

http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e890923.html

 「そういう場合はLC-SCRUM-IBISを利用するといいよ。検体の中の癌細胞数が100個未満であっても、「判定不能」ではなく、参考値としてPD-L1の発現状態を報告してあげます。更に、4つの抗体を用いたIHCの結果(22C3、28-8、SP142、SP263)とmutation burden数まで分かるので、ぜひご利用ください。今後、生検は出来るだけ多くの検体を採取する必要があるよ。でも、生検だとおそらく結構な割合で判定不能と診断されると思います。」

 現在、RET融合遺伝子などを主な検索対象としたLC-SCRUMは登録中断状態にある。

 一方、PD-L1発現状態を複数の抗体で評価し、合わせてmutational burdenの測定や網羅的遺伝子解析も行うLC-SCRUM-IBISが進行中で、LC-SCRUM本体を補完している。

 当院ではまだLC-SCRUM-IBISの倫理審査が終わっていないが、「判定不能」のために治療機会を逸するかもしれない患者さんのことを考えると、焦る。

 検査会社には、実際に提出された検体のうち、どの程度の割合が「判定不能」と処理され、その理由の内訳はなんだったのか、受託開始から半年から1年くらいを目処に学会等で公表してほしい。

 以下の如く、上司にお返事した。

 「ご指導ありがとうございます。判定不能の詳細までは確認できておらず、SRLの担当者は、「切り出した切片に腫瘍細胞が含まれていなかった」としか教えてくれませんでした。先生のおっしゃるように、切片内の腫瘍細胞数が規定の数に達していなかった、というのが真実かもしれません。今回のことでLC-SCRUM-IBISの意義がよくわかりました。今回は、通常鉗子を用いて採取した生検ブロックを5-6個提出してこの回答だったので、かなり高いハードルだと感じました。だからこそcryoprobeに期待しています。」

 この記事を見た医療者にも、是非PD-L1評価の問題点を共有してほしい。

 通常径のガイドシースを使って採取した小さな生検標本では、おそらくPD-L1評価には不十分だ。

 まずは原点回帰して、大きな組織をとるように工夫しなければならない。

 でないと、何度も何度も患者に気管支鏡検査を強いることになるうえに、治療のタイミングを逸する事態にもなりかねない。