PD-L1発現の評価

 Pembrolizumabの臨床導入に向けて、少しずつ体制が整いつつある。

 効果予測因子として知られるPD-L1発現状態を調べる22C3抗体は既に厚労省の承認を受けているらしい。

 Pembrolizumab自体は9月に悪性黒色腫に対して製造販売承認、12月に非小細胞肺癌に対して適応拡大承認が成されたが、2月に予定されるNivolumabの薬価引き下げ後に保険償還が認められるようになる見通しだ。

 そのため、現時点では通常の実地臨床でPembrolizumabを使用することはできない。

 一方、過去にいくつかの有望な薬で行われたように、保険償還が認められる前の倫理供給という形で、一部の施設では使用可能になっており、一般の新聞にも掲載されていた。

 一般臨床家として気になるのは、Pembrolizumabの適用条件がどのようになるか、である。

 腫瘍組織におけるPD-L1発現状態が義務付けられるのであれば、生検診断時には大きめの組織を取って、PD-L1の評価に耐えるように配慮しなければならない。

 こうした世の中の流れを、診断医が踏まえていないとunder diagnosisに陥り、患者の治療機会を逸することになる。

 昨年のワークショップで病理医の先生が、

 「気管支鏡生検時にガイドシース越しに採取した腫瘍組織は小さすぎて、とてもじゃないがPD-L1発現状態を見るのは厳しい」

とおっしゃっていた。

 一方、昨日閲覧したwebセミナーでは、米国メモリアル・スローンケタリング病院のある先生が、

 「PD-L1の発現状態は、実際に調べてみると二極化する傾向が強い」

 「陽性の患者は強陽性だし、陰性の患者ではほとんどPD-L1発現がない」

 「中間層の患者もいないことはないが、実際にはあまり気にしなくてよい程度の頻度だろう」

とコメントしていた。

 進行期の肺癌において、我が国では気管支鏡下生検が、米国では穿刺針生検が一般的とされているため、採取される組織の大きさの違いがあり、その点も踏まえて上記のコメントを参照したい。

 今後は進行期非小細胞肺癌の全例でPD-L1発現状態を確認することになる。

 病理医の負担は増すばかりだが、大丈夫だろうか。