Uさんが亡くなってもう2年を超える。
生活保護を受けておられたせいもあるだろうが、病院から送り出す際、家族のお見送りはたった一人で、軽ワゴン車に載せられて去っていくのがとても切なかった。
最後は誰もみな等しく灰になったり土に還ったりするわけだが、それまでの過程には人の温かみが必要だ。
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先日、七輪焼肉会でご一緒した治癒不能、終末期肺癌のUさんの状態が、日を追うごとに悪化しています。
濃厚な治療を行っているにもかかわらず、多発脳転移による間欠的なけいれんとしゃべりにくさが残っています。
7−8L/分の酸素投与を行っていますが、身の置き所がないためか、つけたり外したりで、そのたびに呼吸困難に陥る悪循環を繰り返しています。
医療用麻薬の効果ではカバーできないようです。
こんなとき、「鎮静薬を持続的に注射して、症状の緩和を図る」という考えが頭をよぎります。
日本緩和医療学会から、「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン2010年版」が示されており、オンラインで参照できます。
http://www.jspm.ne.jp/guidelines/sedation/2010/index.php
しかし、そもそもガイドラインにはまとめにくい内容です。
導入のタイミングからして、難しい。
本人が納得していてもそばにいる家族が納得できない、そのまま経過を見ていたら、
「こんなにもがき苦しんでいるのに、どうして楽にしてやれないんですか??!」
と、たまたまお見舞いに来られた他のご家族から叱責を受けることもしばしばです。
そんなこんなで、鎮静開始のタイミングはずるずると遅れがちで、往々にして本人かご家族から、懇願されるようにして鎮静を始めることが多いです。
それから、本ガイドラインにはどうしても同意できない部分があります。
5章「推奨と委員会合意」の3「治療とケアの実際」には、以下のように記載されています。
● 一般的に,鎮静によって生命予後が短縮しないことを保証する
「お薬を使うと寿命が短くなるのではないか,とご心配されるかもしれません。苦しさが取れるだけの少しの量のお薬をゆっくりと使いますから,使ったからといってそのせいで必ず寿命が短くなるということではありません。」
僕はそうは思いません。
一般的に言って、鎮静によって生命予後が短縮することは多いはずです。
鎮静による「症状緩和」と「生命予後」はトレードオフの関係にあり、必要十分な鎮静をかけた際に、自らの痰による窒息等のリスクが増える以上、生命予後は短縮します。
意思疎通が難しくなることもさることながら、生命予後の短縮がわかっているからこそ、家族もギリギリまで鎮静をためらうのでは?
Uさんはこのところ、
「もうしまいにしてくれ」
「いつがヤマなんや」
としばしば話しています。
鎮静は積極的に推し進めるものではありませんが、慎重にタイミングを図っていきます。