当院からこれまでに2件、経気管支肺生検検体をPD-L1評価に提出した。
1件は扁平上皮癌、1件は腺癌の患者だ。
前者は22C3抗体のみ、後者は22C3抗体、28-8抗体両方で評価した。
前者は5%の陽性率、後者は22C3抗体が30%、28-8抗体が5%の陽性率だった。
後者はPembrolizumabの初回治療を希望していたのだが、この結果では使えない。
抗体によって30%だったり、5%だったりというのも腑に落ちない。
諦めきれずにプレパラートを取り寄せたが、自分で確認したら、所見をつけてくださった病理医は、むしろ好意的に、やや陽性細胞を水増しして評価してくれたのではないかという印象だった。
結果は素直に受け入れて、患者と相談して、初回治療は殺細胞性抗腫瘍薬による化学療法から開始することにした。
以下の報告では、22C3抗体と28-8抗体で評価した場合、結果はほぼ同等と考えてよいとのこと。
実臨床上の有益性という観点からも(22C3抗体の結果はPembrolizumabを選ぶか、Nivolumabを選ぶかという観点で必要な情報だが、28-8抗体の結果は厳密に言えばPembrolizumabを使うかどうかの判断には役立たない)、次回からは、22C3抗体だけで評価することにするか。
Assessment of Immunohistochemistry Assays for PD-L1 Expression in NSCLC
By Matthew Stenger
Posted: 3/30/2017 9:09:11 AM
Last Updated: 3/30/2017 9:09:11 AM
米国食品医薬品局が承認済みのPD-L1用免疫染色キット4種の相同性を見るための試験において、非小細胞肺癌患者のサンプルでは、腫瘍細胞のPD-L1発現評価一致率は高かった一方、炎症細胞のPD-L1発現評価一致率は低かった。Rimmらが、JAMA Oncology誌上で発表した。
今回の検討では、2008年1月から2010年12月にかけて採取された非小細胞肺がん患者90人分の標本について4セットの連続切片を作成し、異なる3施設で28-8抗体(Nivolumabのコンパニオン診断として承認済み)、22C3抗体(Pembrolizumabのコンパニオン診断として承認済み)、SP142抗体(Atezolizumabのコンパニオン診断)、E1L3N抗体でPD-L1発現を評価した。プレパラートは13人の病理医により診断、スコアリングされた。
SP142によるスコアは、他の抗体でのスコアよりも低値だった(腫瘍細胞:SP142 1.99, 22C3 2.96, 28-8 3.26, E1L3N 3.20、炎症細胞:SP142 1.62, 22C3 2.15, 28-8 2.28, E1L3N 2.28)。腫瘍細胞に関しては、28-8抗体とE1L3N抗体の間では有意差はなかったが、22C3抗体では28-8抗体、E1L3N抗体に比べてわずかながら有意に(0.24-0.30)低かった。
スコアリング結果の抗体間での相同性について相関係数を調べたところ、腫瘍細胞のスコアリングでは高い一致率(0.813)だったが、炎症細胞では低い一致率(0.277)だった。病理医間での相同性についても、腫瘍細胞のスコアリングでは高い一致率(0.832-0.882)だったが、炎症細胞では低い一致率(0.172-0.229)だった。
SP142以外の抗体で腫瘍細胞を評価した場合には、結果はほぼ一致すると考えてよさそうである。