免疫チェックポイント阻害薬と使用制限

 日本臨床腫瘍学会、日本肺癌学会からメールが送られてきた。

 以下の内容に関するものだった。

 ニボルマブ、ペンブロリズマブの使用に関するかなり踏み込んだ内容だ。

 使用医師の制限については、専門医資格などは求められていない。

 ペンブロリズマブの薬価収載、および22C3抗体によるPD-L1免疫染色の保険収載に合わせた慌ただしい動きのようである。

 問い合わせをしたところ、キートルーダを取り扱うMSD株式会社/大鵬薬品も、使用可能施設に施設基準を設けている様子だ。

 がん医療のきんてん化と濫用抑制の狭間にあって、これは必要な対応だろう。

 早速というかなんというか、患者さんのご家族からキートルーダ使用に関するお問い合わせが来た。

 まずは病理組織検体を切り出して、PD-L1発現状態を調べなければ。

 

 

■薬生薬審発0214第1号 

 ニボルマブ(遺伝子組換え)製剤及びペムブロリズマブ(遺伝子組換え)製剤の最適使用推進ガイドライン(非小細胞肺癌及び悪性黒色腫)に

ついて

 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170215I0110.pdf

  

■保医発0214第4号

 抗Pd-1抗体抗悪性腫瘍剤に係る最適使用推進ガイドラインの策定に伴う留意事項について

 http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T170215S0090.pdf

 患者のみならず、施設や使用医師にも使用を制限する基準が設けられている。

 患者:PD-L1の検索を行った非小細胞肺癌

  ニボルマブは原則扁平上皮癌かPD-L1陽性の非扁平上皮癌患者に使用し、非扁平上皮癌でPD-L1陽性細胞<1%の場合は、なぜその患者に使用したかの理由を診療報酬請求書に明記する

  ペンブロリズマブはPD-L1陽性の患者に使用を限定する

 施設:都道府県・地域がん診療連携拠点病院等、一定のがん診療の施設基準を満たしている

 使用医師:肺がん化学療法について、一定の経験年数がある

  これらについては、以下を抜粋して記載する。

4.施設について

承認条件として使用成績調査(全例調査)が課せられていることから、当該調査を適切

に実施できる施設である必要がある。その上で、本剤の投与が適切な患者を診断・特定

し、本剤の投与により重篤な副作用を発現した際に対応することが必要なため、以下の

?〜?のすべてを満たす施設において使用するべきである。

? 施設について

?-1 下記の(1)〜(5)のいずれかに該当する施設であること。

(1) 厚生労働大臣が指定するがん診療連携拠点病院等(都道府県がん診療連携拠点病院

地域がん診療連携拠点病院、地域がん診療病院など)(平成28 年10 月1 日時点:

427 施設)

(2) 特定機能病院(平成28 年9 月1 日時点:84 施設)

(3) 都道府県知事が指定するがん診療連携病院(がん診療連携指定病院、がん診療連携

協力病院、がん診療連携推進病院など)

(4) 外来化学療法室を設置し、外来化学療法加算1 又は外来化学療法加算2 の施設基準

に係る届出を行っている施設(平成27 年7 月1 日時点: 2538 施設)

(5) 抗悪性腫瘍剤処方管理加算の施設基準に係る届出を行っている施設(平成27 年7

月1 日時点:1284 施設)

?-2 肺癌の化学療法及び副作用発現時の対応に十分な知識と経験を持つ医師(下表の

いずれかに該当する医師)が、当該診療科の本剤に関する治療の責任者として配置され

ていること。

? 医師免許取得後2 年の初期研修を終了した後に5 年以上のがん治療の臨床研修を行

っていること。うち、2 年以上は、がん薬物療法を主とした臨床腫瘍学の研修を行

なっていること。

? 医師免許取得後2 年の初期研修を終了した後に4 年以上の臨床経験を有しているこ

と。うち、3 年以上は、肺癌のがん薬物療法を含む呼吸器病学の臨床研修を行って

いること。

? 院内の医薬品情報管理の体制について

医薬品情報管理に従事する専任者が配置され、製薬企業からの情報窓口、有効性・安全

性等薬学的情報の管理及び医師等に対する情報提供、有害事象が発生した場合の報告業

務、等が速やかに行われる体制が整っていること。

10

? 副作用への対応について

?-1 施設体制に関する要件

間質性肺疾患等の重篤な副作用が発生した際に、24 時間診療体制の下、当該施設又は

連携施設において、発現した副作用に応じて入院管理及びCT 等の副作用の鑑別に必要

な検査の結果が当日中に得られ、直ちに対応可能な体制が整っていること。

?-2 医療従事者による有害事象対応に関する要件

がん診療に携わる専門的な知識及び技能を有する医療従事者が副作用モニタリングを

含めた苦痛のスクリーニングを行い主治医と情報を共有できるチーム医療体制が整備

されていること。なお、整備体制について、がん患者とその家族に十分に周知されてい

ること。

 

 また、本ガイドラインに関する日本肺癌学会の見解がこちら。

 「本ガイドライン(以下GL)には日本肺癌学会編の肺癌診療GL2016年版との相違点が見られます。さらに上記「留意事項について」が遵守されていない場合は保険査定の可能性もありますので、ここに要点をまとめ、皆様の注意を喚起したいと思います。一番ご注意頂きたい点は非扁平上皮癌セカンドライン治療において、肺癌診療GLではニボルマブはグレードAでPD-L1の発現に関わらず推奨されていますが、最適使用GLでは“PD-L1発現率が1%未満であることが確認された非扁平上皮癌患者においては、原則、ドセタキセル等の本剤(ニボルマブ)以外の抗悪性腫瘍剤の投与を優先する”、となっている点です。なおペムブロリズマブのセカンドライン治療では組織型の如何を問わずPD-L1?%の発現が承認条件となっており、この点に関する齟齬はありません。」