経気管支穿刺吸引細胞診

 再生検の話が盛り上がるとともに、できるだけ確実に腫瘍細胞を得るために様々な取り組みが行われています。

 今回取り上げる経気管支穿刺吸引細胞診も、ここ2−3年でよく聞くようになった手法です。

 通常の経気管支鉗子生検では到達しにくいところに病変がある際に、気管支粘膜から針を刺して、透視下に病巣を穿刺する方法です。

 中枢の気管・主気管支からのリンパ節穿刺ならともかく、末梢の肺を針で直接刺すなんて、気胸を起こしちゃうんじゃないの、と心配になりますが、気胸はあまり問題にならないようです。

 もちろん、胸膜を穿刺しないように、細心の注意を払って穿刺するとか、そもそも胸膜直下の病巣は穿刺しないとか、事前に気をつけるべきことはあるのでしょう。

 むしろ、出血の方に配慮が必要なようです。

 EBUS-GS法との併用で、まず到達困難な病巣に向かって穿刺吸引細胞診を行い、針で道を作った上でEBUSプローブを挿入して、withinが確認できたら鉗子生検に移行する、といった手法は、昨年からよく話されていました。

 今回の発表は、EBUS非併用化での穿刺吸引細胞診の有効性と安全性を報告したものです。

 対象となった患者さんのうち、通常の経気管支肺生検ができたのは全体の64%、そのうち経気管支肺生検で診断できたのは42%、一方で穿刺吸引細胞診で診断できたのは全体の82%だったとのことですから、いかに穿刺吸引細胞診が熊本地域医療センターでの気管支鏡診断率向上に寄与しているかが分かります。

第39回日本呼吸器内視鏡学会総会

#SY 7-1 肺野末梢病変の診断法としてのtransbronchial needle aspiration cytology(TBAC)の有用性と安全性の検討

対象期間:2013年11月1日から2015年10月31日

対象患者:経気管支穿刺吸引細胞診で診断がついた患者65人、67病巣

方法:

・気管支鏡は経鼻挿入

・酸素5L/分を、穴を開けたフェイス・マスクから投与する

・噴霧麻酔、下気道の麻酔はいずれも2%キシロカインを使用

・鎮静はミダゾラムペチジンを標準とする

・使用した気管支鏡はBF-P260F

・使用した穿刺針はNA1C1+MAJ65-21G

・穿刺する際は、体位変換しながら胸膜との距離を保つことに留意する

・穿刺したら、20mlのシリンジで陰圧をかける

・陰圧がかからない、血液が逆流してくる、という際は、速やかに針を抜いて様子を見る

・抗血小板薬内服中でも内服を中止せずに行った(n=7)が、この場合、経気管支肺生検は行わなかった

・検査に要した時間は、40分±13.4分

・穿刺吸引細胞診による診断率は82.1%(55/67病巣)

・経気管支肺生検ができたのは64.2%(43/67病巣)で、そのうち診断できたのは43病巣中診断できたのは65.1%(28/43)、したがって全体のうち経気管支肺生検で診断できたのは41.8%(28/67)。

・穿刺吸引細胞診ができず、経気管支肺生検ができたのは3%(2/67)。

・出血性合併症は81.5%(53/65)、そのうち、止血処置を要したのは1.5%(1/65)。