最近、ひょんなことからRET融合遺伝子陽性肺がん患者に触れる機会がありました。
というのも、義理の父がRET融合遺伝子陽性の進行肺腺がんと診断されたのです。
義理の父は非喫煙者なので、進行肺がんと診断されたこと自体が驚きでした。
加えて、RET肺がんと診断されることになろうとは・・・。
RET肺がんに対する治療については、以前SelpercatinibとPralsetinibについて書き残したことがあります。
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e982216.html
http://oitahaiganpractice.junglekouen.com/e982374.html
両薬剤とも米国では使用可能となっているが、我が国ではまだ保険診療で使用できません。
これらの薬のほか、アレクチニブ、vandetanib、lenvatinibを用いた臨床試験が我が国で計画、遂行されたが、まだ実臨床で使えるようにはなっていません。
アレクチニブについては第II相ALLRET試験が施行され、既に患者登録は終了し、現在は追跡期間中であると聞いています。
Phase I/II study of alectinib in lung cancer with RET fusion gene: study protocol
J Med Invest. 2017;64(3.4):317-320.
doi: 10.2152/jmi.64.317.
vandetanibについては、既に第II相LURET試験が終了し、結果が報告されています。
Vandetanib in patients with previously treated RET-rearranged advanced non-small-cell lung cancer (LURET): an open-label, multicentre phase 2 trial
Lancet Respir Med. 2017 Jan;5(1):42-50.
doi: 10.1016/S2213-2600(16)30322-8. Epub 2016 Nov 4.
lenvatinibについても、vandetanib同様に既に第II相試験が終了し、結果が報告されています。
A phase 2 study of lenvatinib in patients with RET fusion-positive lung adenocarcinoma
Lung Cancer. 2019 Dec;138:124-130.
doi: 10.1016/j.lungcan.2019.09.011. Epub 2019 Sep 16.
そんな中、RET融合遺伝子陽性進行肺がん患者を対象として、Selpercatinib単剤療法とプラチナ製剤+ペメトレキセド±ペンブロリズマブ併用療法を比較する第III相国際共同臨床試験(LIBRETTO-431試験)が進行中です。
全世界で216施設、我が国では以下の12施設が参加しています。
・兵庫県立がんセンター
・金沢大学附属病院
・神奈川県立がんセンター
・近畿大学病院
・静岡県立静岡がんセンター
・がん研有明病院
・鳥取大学医学部付属病院
・岡山大学病院
・大阪国際がんセンター
未治療、IIIB / IIIC / IV期、RET融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん患者を対象として両治療群に1:1の割合で無作為割付し、主要評価項目は無増悪生存期間です。
病勢増悪後のクロスオーバーが許容されているため、本試験に参加すれば治療経過のどこかでSelpercatinibを使用することが保証されています。
患者総数は250人の予定で、2020年2月から登録が開始されています。
RET融合遺伝子の検出にあたり、オンコマインDx Target Test マルチ CDxシステムの結果を適用可能ということなので、実地臨床の延長線上で検索することができます。
LIBRETTO-001試験において、未治療RET陽性進行肺がん患者におけるSelpercatinibの奏効割合は85%、中枢神経系病変の奏効割合は91%ということなので、非常に高い効果が期待できます。
オンコマインDxを適用した患者で、EGFR, ALK, ROS1, BRAFといった実地臨床に適用可能な遺伝子異常が見つからなかったとしても、その他の遺伝子異常ももれなく確認したいものです。